工務店やリフォーム会社で設計士・営業を募集しても、「経験者から応募が来ない」「条件のよい会社に候補者を取られる」と悩む企業は少なくありません。特に、設計経験が豊富な設計士や高い受注実績を持つ営業などのハイクラス人材は、給与だけで転職先を決めているわけではありません。残業時間、休日、担当案件数、社内の分業体制など、入社後の働き方まで確認しています。
一方で、採用条件だけをよく見せても長期的な採用にはつながりません。実際の業務量が変わっていなければ、入社後に「求人票と違う」と感じられ、早期離職につながります。現場が躓くポイントは、採用活動と働き方改革を別々の施策として進めてしまうことです。残業月10時間以下や完全週休2日を打ち出すのであれば、それを維持できる業務フローまで整える必要があります。
採用力を高めるためには、求人広告の表現を変えるだけではなく、設計・営業・施工管理・事務の役割分担を整理し、経験者が本来の仕事に集中できる環境をつくることが重要です。採用前の業務改善から求人票、面接、入社後の定着までを一つの流れとして設計しましょう。

給与を上げて求人を出しているのに、経験豊富な設計士から応募がほとんど来ません。



残業を減らしたいのですが、案件数を減らさずに完全週休2日を実現できるのでしょうか。
この記事では、工務店が残業月10時間以下・完全週休2日を実現しながら、ハイクラスの設計士・営業を採用するための業務改善、求人設計、選考、定着の判断軸を整理します。


設計士・営業の採用、働き方から見直しませんか?
経験者から応募が集まらない、採用しても定着しないとお悩みではありませんか?
採用条件や業務分担、残業・休日の運用まで整理し、自社に合った採用・定着の仕組みづくりを進めましょう。
※設計士・営業の採用や働き方の見直しについてご相談いただけます。
※無理な営業は行いません。
ハイクラス設計士・営業の採用は「働き方」から見直す
経験豊富な設計士や営業を採用するとき、最初に見直したいのが給与ではなく働き方です。ハイクラス人材ほど現在の勤務先でも一定の待遇を得ている可能性があり、給与だけでは転職する理由をつくりにくいためです。
経験者が確認するのは年収だけではない
たとえば住宅設計の経験が10年ある設計士を採用する場合、年収だけでなく「年間休日」「平均残業時間」「担当棟数」「設計以外の業務範囲」まで確認されるケースがあります。営業でも、集客方法や商談件数、契約後の顧客対応範囲などによって実際の負担は大きく変わります。
- 年間休日と休日出勤の実態
- 月平均の残業時間
- 一人あたりの担当案件数
- 設計士・営業が担当する業務範囲
- 事務作業を支援するスタッフの有無
- 休日や勤務時間外の顧客対応ルール
好条件を求人票に書くだけでは採用力は上がらない
失敗しやすいのが、「残業月10時間以下」「完全週休2日」といった条件を先に設定し、実際の業務体制を後から合わせようとする方法です。たとえば営業が現地調査、見積作成、契約、施工中の顧客対応まで抱えていれば、商談が増えた月に残業が急増します。
まず直近3か月程度の勤怠と担当案件数を確認し、どの仕事で時間外労働が発生しているかを洗い出しましょう。そのうえで、採用条件として継続的に提示できる水準を決めます。
採用条件確認テンプレ
月平均残業時間:○時間
年間休日:○日
休日出勤:月○回/振替休日の取得ルール:○○
設計士1名あたりの担当案件数:○件
営業1名あたりの商談数:月○件
時間外の顧客対応:原則なし/当番制/その他○○
ハイクラス人材の採用では、給与条件だけでなく「どのような業務環境で専門性を発揮できるか」を具体的に説明できる状態をつくりましょう。


残業月10時間以下を実現するには業務を分解する


残業削減を進めるときに、「効率よく仕事をする」「定時退社を徹底する」といった掛け声だけでは改善しません。工務店では一人の担当者が複数の業務を兼務しているケースが多いため、まず仕事内容を細かく分解する必要があります。
設計士が設計以外に使っている時間を確認する
設計士が図面作成だけを担当している会社は多くありません。確認申請の準備、顧客への連絡、協力会社との調整、書類整理、社内会議などが積み重なり、本来の設計業務が夕方以降にずれ込む場合があります。
ここで行うのが業務棚卸しです。1週間だけでも、設計士が何に何時間使ったのか記録すると改善対象が見つけやすくなります。
業務棚卸しとは…
担当者が行っている仕事を一覧化し、必要性や担当者、所要時間を整理する作業です。
営業には「営業しかできない仕事」に集中させる
営業についても同様です。たとえば来場予約の入力、資料送付、商談後の顧客情報登録、見積書の体裁調整などを営業本人がすべて行っている場合、受注につながる商談準備や提案に使える時間が減ります。
| 業務 | 現状の担当例 | 改善後の担当例 | 判断軸 |
|---|---|---|---|
| 基本設計 | 設計士 | 設計士 | 専門判断が必要 |
| 確認申請書類の準備 | 設計士 | 設計補助・事務 | 定型化できるか |
| 来場予約入力 | 営業 | 事務・システム | 自動化できるか |
| 見積書の体裁調整 | 営業 | 営業事務 | テンプレート化できるか |
| 顧客への提案 | 営業 | 営業 | 経験や判断が必要 |
| 案件進捗の転記 | 営業・設計 | システム連携 | 二重入力をなくせるか |
改善の判断軸は、「その人でなければできない仕事か」です。
- 専門判断を伴わない仕事
→事務スタッフへの移管やテンプレート化、システムによる自動化 - 毎月1〜2業務ずつ移管
→担当者と処理時間を確認する運用へ
業務棚卸しテンプレ
業務名:○○
担当者:○○
1回の所要時間:○分
月間回数:○回
専門判断:必要/不要
他担当への移管:可能/不可
テンプレート化:可能/不可
システム化:可能/不可
完全週休2日を維持できる案件管理の仕組みをつくる
完全週休2日を採用条件として提示する場合は、休日を設定するだけでなく、休日出勤をできるだけ減らし、発生した場合も確実に振替休日を取得できる仕組みが必要です。
特に注文住宅やリフォームでは、顧客から土日の打ち合わせを希望されることがあります。営業や設計士が個別に予定を調整していると、休日出勤が常態化したり、振替休日を取得できないまま次の案件対応に入ったりする可能性があります。
完全週休2日を維持するには以下の観点から案件管理を見直しましょう。
- 休日出勤をどう管理するか
- 担当者が休んでも案件を進められるか
休日出勤から振替休日の取得まで一元管理する
「休日に出勤したら、別の日に休んでください」というルールだけでは、振替休日の取得を本人任せにしてしまいます。繁忙期になるほど予定を調整できず、振替休日が先送りされやすくなります。
休日管理では、次のように「いつ・誰が・何を確認するか」まで決めておくことがポイントです。
| 管理項目 | 運用ルール | 管理する目的 |
|---|---|---|
| 休日出勤 | 出勤が決まった時点で予定を登録する | 休日出勤の実態を把握する |
| 振替休日 | 休日出勤と同時に取得予定日を登録する | 振替休日の先送りを防ぐ |
| 取得状況 | 週次で責任者が確認する | 未取得者を早期に把握する |
| 顧客対応 | 休日中は原則として代理担当へ引き継ぐ | 休日中の電話・チャット対応を減らす |
| 緊急対応 | 緊急対応とする条件を事前に決める | 不要な休日対応を防ぐ |
休日出勤の「申請」だけで管理を終わらせず、振替休日を実際に取得したかまで確認することが重要です。
担当者が休んでも案件が止まらない状態をつくる
完全週休2日を運用するうえでもう一つ注意したいのが、担当者が休むと案件の状況が分からなくなる状態です。
この状態を防ぐには、案件管理システムや共有シートに最低限の情報を残し、別の担当者でも現在の状況を確認できるようにします。
案件ごとに、少なくとも次の情報を共有しましょう。
- 現在の案件ステータス
- 次回の顧客対応日
- 顧客から受けている質問や要望
- 見積・図面などの提出状況
- 次に行う対応と期限
- 担当者が不在の場合の代理担当者
- 緊急対応が必要な事項
たとえば営業担当者が月曜日に休む場合でも、「見積書提出済み・顧客回答待ち・次回連絡は水曜日」と共有されていれば、ほかの社員が緊急対応の必要性を判断できます。反対に進捗が共有されていなければ、顧客から問い合わせが入るたびに休日中の担当者へ確認しなければなりません。
休日管理と案件管理をセットで運用する
完全週休2日を現場へ定着させるには、勤怠だけではなく案件の進捗もあわせて管理することが重要です。
具体的には、次の流れで運用します。
- 休日出勤が決まったら振替休日も同時に登録する
- 休日前に担当案件の進捗と次回対応を更新する
- 担当者不在時の代理担当を決める
- 週次会議で振替休日の未取得者を確認する
- 休日対応が発生した場合は理由を記録する
- 休日対応が繰り返される案件や業務は、原因と改善方法を検討する
特に重要なのは、休日対応が発生した事実だけで終わらせないことです。「顧客から急ぎの連絡があった」「担当者以外では判断できなかった」などの理由を残しておけば、代理対応のルールや情報共有方法を見直す材料になります。
完全週休2日は「週に2日休みを設定する」だけでは維持できません。休日出勤の発生から振替休日の取得、案件情報の共有、担当者不在時の代理対応までを一つの運用として設計し、誰かが休んでも案件が止まらない体制をつくりましょう。


設計士・営業の採用、働き方から見直しませんか?
経験者から応募が集まらない、採用しても定着しないとお悩みではありませんか?
採用条件や業務分担、残業・休日の運用まで整理し、自社に合った採用・定着の仕組みづくりを進めましょう。
※設計士・営業の採用や働き方の見直しについてご相談いただけます。
※無理な営業は行いません。
ハイクラス人材に伝わる求人票と採用メッセージをつくる


働き方を改善しても、求人票から内容が伝わらなければ応募にはつながりません。「働きやすい職場です」「ワークライフバランスを大切にしています」といった抽象的な表現ではなく、数字と業務内容を使って説明しましょう。
「残業が少ない理由」まで求人票に書く
残業を減らせている理由まで説明することで、候補者は入社後の働き方を具体的に想像しやすくなります。
- 月平均残業10時間以下
- 確認申請の準備は設計補助が担当
- 見積書作成は営業事務が支援
ここで注意したいのが、実態よりよく見せないことです。繁忙期だけ残業が20時間を超えるのであれば、その事実を隠すのではなく、通常期と繁忙期を分けて説明しましょう。平均値だけではなく、実際の変動幅を把握しておくことが重要です。


ハイクラス人材には「任せたい仕事」を明確にする
経験者採用では、会社が何を期待しているのかも重要です。「設計業務全般」「住宅営業」といった書き方では担当範囲が分かりません。設計士であれば基本設計、実施設計、顧客打ち合わせのどこを中心に任せるのか、営業なら新規集客から担当するのか、反響顧客への提案から担当するのかを明確にしましょう。
たとえば「年間15棟前後の基本設計を担当し、申請書類作成は設計補助が担当する」と記載すれば、候補者は業務量を判断できます。採用担当、設計責任者、営業責任者の3者で求人票を確認し、実態と異なる表現がないかチェックする運用にしましょう。
求人票作成テンプレ
月平均残業:○時間
年間休日:○日
完全週休2日制:○曜日・○曜日
担当案件数:年間○件程度
主な担当業務:○○、○○、○○
担当しない業務:○○、○○
事務・設計補助体制:○名
入社後に期待する役割:○○
求人票では「働きやすい」と表現するのではなく、残業時間、休日、担当件数、分業体制など候補者自身が働き方を判断できる情報を提示しましょう。


面接から入社後まで一貫した採用・定着設計を行う
ハイクラス人材の採用では、応募数だけを追わないことも重要です。経験豊富な人材を採用できても、仕事内容や期待される役割に認識差があれば早期離職につながります。そのため、面接では候補者を評価するだけでなく、会社側の情報を具体的に開示しましょう。
面接では前職の不満ではなく転職後の希望を確認する
「なぜ前職を辞めたいのですか」だけではなく、「次の職場でどのような働き方を希望していますか」「設計業務の中でどの工程に集中したいですか」など、転職後の希望を確認します。
入社後90日間は採用条件とのずれを確認する
採用成功を「入社した時点」で判断するのも失敗しやすいポイントです。入社後30日、60日、90日を目安に面談を行い、残業時間、担当案件数、業務範囲、人間関係などを確認しましょう。
たとえば「残業月10時間以下」で採用した社員が入社2か月目に18時間となった場合、本人の能力だけを原因にせず、案件数や引き継ぎ方法まで確認します。既存社員と同じ基準で業務を割り振るのではなく、習熟度に応じて担当件数を増やす運用が必要です。
- 求人票で説明した残業時間と差がないか
- 休日出勤が想定以上に発生していないか
- 担当業務が採用時の説明から増えていないか
- 担当案件数は適切か
- 上司や他部署へ相談できているか
- 本人が強みを発揮できている業務は何か
チェックリストは人事だけで保管せず、直属の上司とも共有しましょう。面談で出た課題について「誰が・いつまでに・何を改善するか」を決めることで、採用後のフォローを実務へ落とし込めます。
入社後面談テンプレ
現在の担当案件数:○件
月間残業時間:○時間
採用時に聞いていた仕事内容との差:あり/なし
負担が大きい業務:○○
今後増やしたい業務:○○
会社側で改善する項目:○○
担当者:○○/対応期限:○月○日


採用改革を一過性にしないために数字で運用する


残業削減や完全週休2日を実現しても、一度制度を整えただけでは維持できません。受注増加や退職、繁忙期などによって業務量は変化するためです。採用と働き方を継続的に改善するためには、毎月確認する数字を決めておきましょう。
採用KPIと労務KPIを一緒に確認する
KPIとは、目標に向けた進捗を確認するための数値指標です。採用担当が応募数だけを確認し、工事部や設計部が残業時間だけを確認するのではなく、採用と現場の数字を一緒に見ることがポイントです。
- 求人の応募数
- 経験者からの応募数
- 面接数と内定数
- 内定承諾率
- 設計士・営業の月平均残業時間
- 一人あたりの担当案件数
- 休日出勤回数と振替休日未取得数
- 入社3か月以内の離職数
たとえば応募数は増えているのに経験者からの応募が増えていない場合、求人媒体を追加する前に求人内容を見直します。
一方、採用は順調でも既存社員の残業が増えている場合は、採用人数ではなく案件配分や分業体制を確認します。
月1回30分の採用・働き方レビューを行う
社内運用では、大掛かりな会議を新設する必要はありません。経営者、採用担当、設計または営業責任者が月1回30分程度集まり、数字の変化と改善事項を確認するだけでも十分です。
失敗しやすいのは、数値を集計するだけで終わることです。前月より残業が増えた場合は「なぜ増えたか」「翌月に何を変えるか」まで決めます。改善策には担当者と期限を設定し、翌月の会議で結果を確認しましょう。
30分月次レビュー用テンプレ
10分|数字を確認
応募数・面接数・内定数・残業時間・休日出勤数を前月と比較
10分|原因を確認
数字が悪化・改善した理由は何か
採用活動と現場のどこに変化があったか
10分|翌月の対応を決定
改善すること:○○
担当者:○○
期限:○月○日
次回確認する数値:○○
採用数と残業時間を別々に管理せず、採用・担当案件数・残業・休日取得を同じタイミングで確認すると、好条件を継続できる組織づくりにつながります。


まとめ|働き方の実態を整えてから採用条件として発信する
ハイクラスの設計士・営業を採用するためには、「残業月10時間以下」「完全週休2日」という言葉だけを求人票に追加するのではなく、それを維持できる業務体制を整えることが重要です。
明日からできる一歩
- 設計士または営業1名の「1週間の業務」を書き出す
- 「本人でなければできない仕事か」を業務ごとに確認する
- 業務の棚卸し結果を経営者・現場責任者・採用担当で共有する
- 求人票に記載している仕事内容・働き方と、現場の実態が一致しているか確認する
- 月1回のレビューで採用状況や働き方を確認し、必要に応じて改善する
- 採用条件を一時的なアピールで終わらせず、自社の働き方として定着させる
採用力を高める第一歩は求人広告の変更ではありません。現場の業務を整理し、経験者が長く働ける状態をつくったうえで、その事実を数字と具体的な業務内容で伝えましょう。
設計士・営業の採用、働き方から見直しませんか?
経験者から応募が集まらない、採用しても定着しないとお悩みではありませんか?
採用条件や業務分担、残業・休日の運用まで整理し、自社に合った採用・定着の仕組みづくりを進めましょう。
※設計士・営業の採用や働き方の見直しについてご相談いただけます。
※無理な営業は行いません。








