【退職金制度】職人が長く働ける会社に!「中退共」の導入メリットと掛金の設定・導入手順

職人や施工管理者の採用が難しくなるなか、給与だけでなく、退職金や福利厚生を重視して勤務先を選ぶ人が増えています。しかし、中小規模の工務店やリフォーム会社では、退職金の原資を社内で積み立てる余裕がなく、制度設計や管理業務まで手が回らないケースも少なくありません。

特に建設業では、現場ごとに勤務形態が異なるうえ、正社員、期間雇用者、短時間勤務者などが混在します。そのため、誰を対象にするのか、毎月いくら積み立てるのか、建退共とどのように使い分けるのかが曖昧になりやすいです。制度の内容を決めないまま加入手続きだけを進めることが、現場で最も躓きやすいポイントです。

退職金制度を設けたいのですが、会社の資金繰りに負担がかからないか心配です。

建設会社は建退共に入っていれば、中退共を検討する必要はないのでしょうか。

中退共は、国の制度を活用して従業員の退職金を準備できる仕組みです。掛金を従業員ごとに設定できるため、会社の規模や賃金体系に合わせて段階的に導入できます。一方で、短期間で退職した場合の給付額や、対象者の決め方には注意が必要です。

この記事では、中退共の仕組み、建設業で導入するメリット、掛金の決め方、建退共との使い分け、社内で運用を定着させる手順を整理します。

職人が長く働ける退職金制度、
どのように整えるか迷っていませんか?

中退共は、採用力の強化や職人の定着、計画的な退職金準備に活用できる制度です。
自社に合った加入対象者や掛金の決め方、建退共との使い分けを整理しましょう。

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※従業員数や雇用形態、資金計画に合わせてご相談いただけます。
※無理な営業は行いません。

目次

中退共とは中小企業が退職金を準備するための国の制度

退職金制度に従業員は満足する様子

中退共は「中小企業退職金共済制度」の略称です。自社だけで退職金制度を運営することが難しい中小企業に代わり、独立行政法人勤労者退職金共済機構が退職金の積立と支払いを管理します。

制度の仕組み

  • 会社が従業員ごとに毎月の掛金を納付
  • 従業員が退職した際に、機構から本人へ退職金が直接支払い

会社が退職時にまとまった現金を準備する方式ではないため、将来の退職金支払いによって資金繰りが急激に悪化するリスクを抑えられます。

建設業は従業員数300人以下または資本金3億円以下が対象

建設業を含む一般業種では、常用従業員数が300人以下、または資本金・出資金が3億円以下の企業が加入対象です。どちらか一方の基準を満たしていれば対象になります。個人事業の場合は資本金の基準がないため、常用従業員数(雇用期間の定めがない人や、2か月を超えて雇用される人など)で判断します。

掛金は会社が負担し退職金は従業員へ直接支払われる

中退共の掛金は全額会社負担です。給与から従業員負担分を差し引く制度ではありません。毎月の掛金は会社の口座から振り替えられ、退職時には従業員本人が請求手続きを行います。

  • 会社は従業員ごとの掛金額を決める
  • 会社が毎月の掛金を納付する
  • 従業員が退職時に機構へ請求する
  • 機構から従業員本人へ退職金が支払われる

工務店で起こりやすい失敗は、中退共に加入すれば社内規程がなくても問題ないと考えることです。実際には、加入対象者、加入時期、掛金額、休職中の取扱いなどを退職金規程や社内ルールで決める必要があります。総務担当者だけで判断せず、経営者と現場責任者を含めて運用条件を確認しましょう。

加入対象確認テンプレ
会社の業種:建設業
常用従業員数:〇人
資本金・出資金:〇円
加入予定者:正社員〇人、短時間労働者〇人
既存の退職金制度:あり・なし
建退共の加入状況:加入済み・未加入

中退共は退職金の積立と支払いを外部化できる制度ですが、加入対象者や掛金額を決める責任は会社にあります。

建設会社が中退共を導入する4つのメリット

中退共は退職金を準備するだけの制度ではありません。求人票や採用面談で福利厚生として提示できるほか、定着率の改善、資金管理の安定化、税負担の適正化にもつながります。

メリット1:採用条件を明確にして職人の定着につなげられる

建設業では、基本給や日給が同程度であれば、退職金、休日、資格取得支援などの福利厚生が勤務先を選ぶ判断材料になります。「退職金制度あり」と求人票に記載できれば、長期雇用を前提とした会社であることを伝えやすくなります。

例えば、経験5年の職人を採用する際に、給与額だけを伝える会社と、試用期間終了後から中退共へ加入すると説明する会社では、将来の待遇に対する安心感が異なります。ただし、求人票に「退職金あり」とだけ記載するのは避けましょう。加入時期や勤続年数などの条件を明記しなければ、採用後の認識違いにつながります。

メリット2:退職時に多額の資金を用意する負担を抑えられる

自社で退職金を支払う場合、勤続年数の長い職人が複数人同時に退職すると、数百万円単位の支出が発生することがあります。中退共では毎月掛金を納めるため、退職時の支出を平準化できます。

平準化とは…
大きな支出を一度に負担せず、毎月の一定額に分けて管理することです。月次の資金繰り表に掛金を固定費として組み込めば、将来の退職金支払いを予算化しやすくなります。

メリット3:掛金を損金または必要経費として処理できる

会社が支払った中退共の掛金は、法人の場合は原則として損金、個人事業の場合は必要経費として扱います。損金とは、法人税を計算する際に収益から差し引ける費用のことです。単なる社内積立とは異なり、従業員の福利厚生を整えながら税務上の費用として処理できます。

ただし、節税だけを目的に掛金を高くすると、毎月の資金繰りを圧迫します。会計上費用にできることと、手元資金が減ることは別の問題です。導入前に年間負担額を計算し、繁忙期と閑散期の資金残高を確認しましょう。

  • 求人票に加入条件を記載したか
  • 年間掛金総額を試算したか
  • 月次資金繰り表へ反映したか
  • 税理士へ会計処理を確認したか
  • 退職金規程と雇用契約書の表記を統一したか

実務では、経営者が掛金方針を決め、総務が加入者一覧を管理し、経理が納付額を確認する流れにすると運用しやすくなります。毎月の給与計算後に加入者数と掛金総額を照合するルールを設けましょう。

採用力と節税効果だけで判断せず、毎月継続して支払える金額を基準に制度を設計しましょう。

中退共の掛金はいくらに設定すればよいか

中退共の掛金をいくらにするか電卓で計算する
Businessman analyzing investment charts and pressing calculator buttons over documents. Accounting Concept

中退共の通常掛金は、従業員1人につき月額5,000円から30,000円までの16種類です。短時間労働者については、月額2,000円、3,000円、4,000円の特例掛金も選択できます。短時間労働者とは、通常の従業員より週の所定労働時間が短く、かつ週30時間未満で働く人です。

勤続年数や役職に応じた基準を作る

掛金は従業員ごとに設定できますが、経営者の感覚だけで金額を決めると不公平感が生まれます。職種、役職、勤続年数など、客観的な区分を設けましょう。

設定方法運用例メリット注意点
一律設定全正社員を月額5,000円にする管理が簡単勤続年数や役割が反映されない
勤続年数別3年未満5,000円、3年以上8,000円長期勤務を評価できる変更時期の管理が必要
役職別一般職5,000円、職長8,000円、管理職10,000円責任範囲を反映できる役職変更時の手続きが必要
基本給連動賃金等級ごとに掛金を設定する給与制度と整合しやすい制度が複雑になりやすい

従業員10人の工務店が全員を月額5,000円で加入させる場合、会社負担は月額5万円、年間60万円です。月額1万円にすれば年間120万円になります。金額だけを見るのではなく、3年後や5年後に従業員が増えた場合の総負担額まで試算しましょう。

最初は低めに設定して段階的に増額する

制度を長く続けるには、最初から理想額を設定するより、無理なく継続できる金額から始める方法が適しています。例えば、加入時は月額5,000円とし、勤続3年で8,000円、職長昇格時に1万円へ増額する運用です。

新規加入事業主には、加入後4か月目から1年間、掛金月額の2分の1、従業員1人につき上限5,000円の助成があります。また、一定の掛金増額に対する助成もあります。ただし、対象外となる事業主や条件があるため、助成額を前提に恒久的な予算を組まないようにしましょう。

掛金設定テンプレ
入社から試用期間終了まで:加入対象外
本採用から勤続3年未満:月額5,000円
勤続3年以上:月額8,000円
職長・主任昇格後:月額10,000円
掛金見直し時期:毎年〇月
決定者:代表者、総務責任者、経理責任者

失敗しやすいのは、売上が好調な年度に掛金を増額し、その後の減収時に負担できなくなるケースです。掛金を決める際は、直近月ではなく、過去12か月の平均営業利益と最低現預金残高を確認しましょう。

掛金は採用時の見栄えではなく、従業員数が増えても継続できる年間予算から逆算して決めましょう。

職人が長く働ける退職金制度、
どのように整えるか迷っていませんか?

中退共は、採用力の強化や職人の定着、計画的な退職金準備に活用できる制度です。
自社に合った加入対象者や掛金の決め方、建退共との使い分けを整理しましょう。

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※従業員数や雇用形態、資金計画に合わせてご相談いただけます。
※無理な営業は行いません。

建退共と中退共の違いを理解して使い分ける

建設会社が退職金制度を検討する際は、建退共との違いを整理する必要があります。

建退共とは…
「建設業退職金共済制度」の略称で、主に建設現場で働く期間雇用者などを対象とした制度です。

一方、中退共は会社に雇用される常用従業員を中心に退職金を積み立てる制度です。

正社員は中退共で現場ごとの就労者は建退共を検討する

例)

  • 中退共
    →自社で継続雇用している施工管理者、正社員の大工、営業担当者、事務員
  • 建退共
    →複数の建設会社の現場を移動しながら働く期間雇用者

ただし、「現場に出る人は全員建退共」「内勤者は中退共」と機械的に分けるのは危険です。雇用期間、勤務実態、既存の加入状況を確認し、同じ勤務期間について重複した取扱いにならないようにしましょう。

従業員ごとの加入状況を一覧で管理する

現場監督が建退共の証紙や就労実績を管理し、総務が中退共を管理している会社では、部門間の情報が分断されやすくなります。入社時、現場配置時、雇用区分変更時、退職時の4つのタイミングで加入状況を確認しましょう。

  • 従業員氏名と雇用区分
  • 中退共の加入有無と掛金月額
  • 建退共の加入有無
  • 加入日と退職予定日
  • 勤務先や担当現場
  • 制度変更や通算手続きの有無

現場ヒアリング項目
対象者は期間の定めがない正社員ですか
複数の建設会社の現場を移動しますか
現在または過去に建退共へ加入していますか
中退共に加入している勤務期間と重複しませんか
雇用区分が変更される予定はありますか
退職金の通算を希望していますか

社内で判断が難しい場合は、社会保険労務士や各共済制度の窓口へ確認しましょう。制度名だけで判断せず、従業員本人の雇用実態を基準に整理することが重要です。

建退共と中退共は対象となる働き方が異なるため、従業員単位で雇用実態と加入期間を確認しましょう。

中退共導入時に注意したい短期退職と対象者設定

中退共導入時に対象者設定するためチェックを入れる
Human resource management. HR recruitment employee. Career hire job. A person is using a laptop with a blue screen that has a check mark on it. The person is holding a pen.

中退共は長期的な退職金準備に適した制度ですが、加入後すぐに退職した場合は、納付した掛金総額がそのまま退職金になるとは限りません。採用時に制度の仕組みを誤って説明すると、退職時のトラブルにつながります。

掛金納付月数が短いと退職金が少なくなる

掛金納付月数が11か月以下の場合、原則として退職金は支給されません。12か月以上23か月以下の場合も、支給額は納付した掛金総額を下回ります。24か月以上42か月以下では掛金総額相当額となり、43か月以上になると長期加入による加算が反映されます。

例えば、入社直後に加入させた従業員が半年で退職した場合、会社が納めた掛金が本人へそのまま返るわけではありません。この点を「積み立てた分は必ず全額受け取れる」と説明しないようにしましょう。

原則全員加入を前提に合理的な除外基準を決める

中退共は、原則として従業員を包括的に加入させる制度です。ただし、短期間内に退職することが明らかな人や、期間を定めて雇用される人などは加入対象から除外できる場合があります。

会社と関係が良い職人だけを加入させる、退職しそうな人だけを除外するといった恣意的な運用は避けましょう。恣意的とは、客観的な基準ではなく、担当者の都合や感情で判断することです。雇用区分、試用期間、定年までの期間など、誰が確認しても同じ結論になる基準を設けます。

対象者決定テンプレ
対象者:期間の定めがない正社員
加入時期:試用期間終了後の本採用月
短時間労働者:週所定労働時間と雇用期間を確認して個別判断
除外対象:期間雇用者、定年までの期間が短い者など制度上認められる範囲
判断責任者:代表者および総務責任者
確認時期:入社時、雇用区分変更時、毎年〇月

既に1年以上勤務している従業員については、会社が新規加入する際に、加入前の継続勤務期間を1年単位、最長10年まで通算できる制度があります。ただし、新規加入の申込みと同時に手続きする必要があるため、後から検討しようとすると間に合いません。

短期退職時の給付条件と加入対象者の基準は、加入前に規程へ明記し、採用担当者にも共有しましょう。

中退共を導入して社内運用を定着させる手順

中退共の導入では、申込書を提出する前の社内整理が重要です。対象者や掛金額が決まっていない状態で加入すると、後から従業員への説明や給与制度との整合に時間がかかります。

経営者と管理部門で年間予算を決める

最初に、加入予定人数と掛金月額から年間負担額を計算します。従業員15人を月額5,000円で加入させる場合、年間負担額は90万円です。翌年度に3人採用する計画があれば、18人分の108万円まで見込んでおきます。

決算直前の節税策として急いで導入するのではなく、3年程度の採用計画と資金繰り計画を確認しましょう。繁忙期の売上ではなく、受注が減った月でも支払える金額を基準にします。

社内稟議テンプレ
目的:職人および従業員の定着、採用条件の改善、退職金原資の計画的な準備
加入予定人数:〇人
初年度掛金月額:1人当たり〇円
年間負担見込額:〇円
助成終了後の年間負担額:〇円
加入予定日:〇年〇月
規程整備担当:〇〇
従業員説明担当:〇〇

退職金規程と従業員向け説明文を整える

中退共へ加入する場合でも、退職金規程を作成しましょう。規程には、制度の目的、対象者、加入時期、掛金額、掛金の見直し時期、休職中の取扱い、退職時の請求方法などを記載します。

従業員向け説明文テンプレ
当社では、従業員の長期的な生活基盤を支援するため、中小企業退職金共済制度を導入します。対象者は退職金規程に定める従業員とし、掛金は会社が全額負担します。退職金は退職時に勤労者退職金共済機構から本人へ直接支払われます。受給額は掛金月額と納付月数によって異なるため、加入期間が短い場合は掛金総額を下回る、または支給されない場合があります。

毎年1回加入者と掛金を見直す

導入後は、入社、退職、休職、復職、雇用区分変更、役職変更を管理します。特に現場職から管理職へ昇格した場合や、短時間勤務から正社員へ変更した場合は、掛金区分の見直し漏れが起こりやすくなります。

  • 在籍者一覧と加入者一覧が一致しているか
  • 退職者の手続きが完了しているか
  • 役職や勤続年数に応じた掛金になっているか
  • 休職者の取扱いが規程どおりか
  • 助成終了後の予算を確保しているか
  • 求人票と社内規程の表記が一致しているか

運用担当者を1人だけにすると、退職や休職によって手続きが止まる危険があります。総務を主担当、経理を確認担当、経営者を承認担当とするなど、最低2人以上が管理方法を把握しましょう。

導入手続きだけで終わらせず、年1回の加入者確認と掛金見直しを年間業務として固定しましょう。

まとめ|中退共を活用して採用力・定着率・節税を実現する

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中退共は、中小規模の工務店やリフォーム会社が、毎月の掛金によって計画的に退職金を準備できる制度です。採用力の強化、職人の定着、退職時の資金負担の平準化、福利厚生の整備に活用できます。

判断の軸は、加入できるかどうかだけではありません。

  • 誰を対象にするのか
  • 毎月いくらなら継続できるのか
  • 建退共とどのように使い分けるのか
  • 短期退職時の条件をどのように説明するのか

など決める必要があります。

まずは従業員一覧に雇用区分、中退共と建退共の加入状況、勤続年数を追加しましょう。そのうえで月額5,000円から始めた場合の年間負担額を計算します。制度導入後も、経営者、総務、経理が同じルールを共有し、毎年の確認業務として定着させましょう。

退職金制度は金額の大きさではなく、従業員に説明できる明確な基準と、会社が長く継続できる仕組みを整えることが重要です。

職人が長く働ける退職金制度、
どのように整えるか迷っていませんか?

中退共は、採用力の強化や職人の定着、計画的な退職金準備に活用できる制度です。
自社に合った加入対象者や掛金の決め方、建退共との使い分けを整理しましょう。

退職金制度の導入について相談する >

※従業員数や雇用形態、資金計画に合わせてご相談いただけます。
※無理な営業は行いません。

この記事を書いた人

くらし建築百科 編集部は、工務店・リフォーム会社・建築会社の「現場」と「経営」の両方に寄り添う情報発信チームです。住宅業界のマーケティング支援やDX導入支援に携わってきたメンバーが、集客・採用・補助金・業務効率化など、明日から使える実務ノウハウを分かりやすくお届けします。

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