工務店やリフォーム会社では、電動工具、測量機器、現場用パソコン、タブレット、軽トラックの付属設備など、日々の業務に必要な設備を継続的に購入します。しかし、購入した設備をその年の経費にできるのか、数年間に分けて減価償却するのかを購入前に確認できていない会社も少なくありません。
特に決算直前は、利益が出そうだからという理由だけで設備を購入し、納品日や使用開始日が翌期になってしまうケースがあります。また、見積書の本体価格だけを見て判定し、送料や設置費を含めると基準額を超えていたという失敗もあります。現場が躓きやすいポイントは、設備の価格ではなく、税務上の取得価額と事業で使い始めた時期で判定することです。
なお、税務上の「一括償却資産」と「少額減価償却資産の特例」は別の制度です。2026年4月1日以後に取得などをする資産については、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられています。購入日や会社の適用要件によって処理が変わるため、制度名と金額基準を分けて確認しましょう。

決算前に工具やパソコンを買えば、購入代金をすべて今期の経費にできるのでしょうか。



40万円未満なら、重機や車両もすべて一括で経費にできると考えて問題ないでしょうか。
この記事では、建設会社が設備投資前に確認すべき金額基準、対象要件、取得価額の考え方、決算までの運用手順を整理します。
設備投資の判断、
節税だけで決めていませんか?
建設用重機や車両、工具の導入では、税務上の処理だけでなく、資金繰りや投資効果まで含めた判断が重要です。
自社の利益計画や設備投資の状況に合わせて、実務に落とし込むための進め方をご相談いただけます。
※設備投資の進め方や社内運用の整理についてご相談いただけます。
※個別の税務判断については、税理士などの専門家への確認が必要です。
※無理な営業は行いません。
少額設備を処理する3つの制度を区別する


少額の設備を購入したときは、取得価額に応じて複数の処理方法があります。社内で「一括償却」と呼んでいても、税務上は異なる制度を指している場合があるため注意が必要です。経理担当者だけでなく、購入を決める経営者や工事部の責任者も基本的な違いを理解しておきましょう。
10万円未満は原則として購入年度の経費にする
使用可能期間が1年未満の資産や、取得価額が10万円未満の資産は、原則として事業で使い始めた年度に全額を経費または損金へ算入できます。損金とは、法人税を計算するときに収益から差し引ける税務上の費用です。
工務店の実務では、低価格の電動工具、事務所用モニター、プリンター、現場撮影用カメラなどが候補になります。ただし、同時に購入した複数の商品を一式として使用する場合は、単品価格だけで判断できないことがあります。例えば、パソコン本体と専用ディスプレイ、制御装置と専用機器など、機能上まとまって使用する設備は一組の取得価額で判定する必要があります。
20万円未満は一括償却資産として3年間で処理できる
取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産として3年間にわたり均等に損金または必要経費へ算入する方法を選べます。一括償却資産とは、個別の法定耐用年数を使わず、対象資産をまとめて3年間で費用化する制度です。
例えば、18万円の現場用タブレットを一括償却資産として処理する場合は、原則として毎年6万円ずつ3年間で費用化します。購入した年度に18万円全額を経費にする制度ではありません。「一括」という名称から、購入年度に全額処理できると誤解しないようにしましょう。
40万円未満は中小企業向け特例の対象になり得る
一定の中小企業者等が対象資産を取得し、事業で使用した場合は、少額減価償却資産の特例によって取得価額の全額を使用開始年度の損金へ算入できます。2026年4月1日以後に取得などをする資産は、取得価額40万円未満が基準です。年間の合計額は引き続き300万円が上限となります。
| 取得価額の区分 | 主な処理方法 | 費用化の時期 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 少額資産として経費処理 | 使用開始年度に全額 | 一式で機能する設備は合計額を確認する |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産 | 3年間で均等に処理 | 購入年度の全額経費ではない |
| 40万円未満 | 中小企業者等の少額減価償却資産特例 | 使用開始年度に全額 | 対象者要件と年300万円の上限を確認する |
| 40万円以上 | 通常の減価償却など | 耐用年数に応じて処理 | 別の設備投資税制を使える場合がある |
失敗しやすいのは、購入担当者がすべてを「一括償却」と経理へ伝えてしまうことです。社内では、取得価額、購入日、納品日、使用開始日、適用を検討する制度を分けて記録しましょう。
判断テンプレ
取得価額:〇〇円
購入日:〇月〇日
納品日:〇月〇日
使用開始日:〇月〇日
検討する処理:10万円未満の少額資産/一括償却資産/少額減価償却資産特例/通常の減価償却
税理士確認:要/不要
少額減価償却資産の特例と一括償却資産は、金額基準も費用化の期間も異なります。社内申請では制度名を省略せずに記載しましょう。


建設用重機や車両が特例の対象になる条件
少額減価償却資産の特例は、パソコンや事務用品だけを対象とする制度ではありません。取得価額などの要件を満たす減価償却資産であれば、建設現場で使う機械、工具、車両運搬具、器具備品も対象になる可能性があります。ただし、建設用重機や車両は本体価格が40万円以上になることが多いため、実務では中古機器、小型機械、車両付属設備などが主な検討対象になります。
資産の名称ではなく取得価額と使用実態で判断する
対象になるかどうかは、「重機だから対象外」「車両だから対象外」といった名称だけでは決まりません。
- 事業に使用する減価償却資産である
- 取得価額が基準未満である
- 対象となる中小企業者等が取得して使用する
例)
- 中古の小型運搬車や小型建設機械
- コンクリートカッターや発電機
- レーザー墨出し器や測量機器
- 車両へ後付けする棚や収納設備
- 現場管理用のパソコンやタブレット
- 施工写真を撮影するカメラや周辺機器
例えば、38万円の中古小型運搬車を購入し、対象要件を満たした会社が事業で使用した場合は、特例を検討できます。一方、車両本体が150万円で、頭金だけが30万円だった場合は、30万円を基準に判定できません。分割払いやローンを利用しても、原則として資産の取得価額全体で判断します。
セットで機能する設備は一式の金額を確認する
複数の商品を同時に購入した場合、請求書の明細ごとに40万円未満なら必ず特例を使えるわけではありません。通常は、取引単位や機能単位を踏まえて取得価額を判定します。
機能単位とは…
その設備が単独で業務に使用できるか、一式そろって初めて目的を果たすかという考え方です。
例えば、現場事務所用のパソコン20万円と、単独使用できるモニター8万円を購入した場合は、個別資産として扱える可能性があります。一方、専用制御盤25万円と、その制御盤がなければ使用できない機器20万円を一体として導入した場合は、合計45万円の一式として判定する可能性があります。
現場ヒアリング項目
設備名:
使用する現場・部署:
単独で使用できるか:はい/いいえ
他の機器と一体で使用するか:はい/いいえ
本体価格:
送料・設置費・設定費:
使用開始予定日:
既存設備との入替えか:はい/いいえ


取得価額40万円未満を判定するときの注意点


40万円未満の判定で使用する取得価額は、販売店が表示している本体価格と一致するとは限りません。取得価額とは、資産の購入代金に加えて、その資産を事業で使える状態にするために直接必要となった費用などを含めた金額です。見積段階で本体価格しか確認していないと、納品後に基準額を超える可能性があります。
送料や設置費を含めて判定する
例えば、機器本体が37万円でも、運送費2万円、設置調整費2万円が取得価額に含まれる場合は、合計41万円になります。この場合は40万円未満の基準を満たしません。現場で使用するための初期設定費、据付費、試運転費なども、内容によって取得価額へ含める必要があります。
- 資産本体の購入代金
- 引取運賃や配送費
- 購入手数料
- 据付費や設置工事費
- 使用開始に必要な設定費や調整費
- 既存設備の撤去費など、個別判断が必要な費用
改善のコツは、発注申請書へ「本体価格」だけでなく「取得価額見込額」の欄を設けることです。購入担当者が判断できない費用は、経理担当者が見積書の内容を確認して加算します。
税込経理か税抜経理かを統一する
消費税の経理方法によって、取得価額を税込金額で判定するか、税抜金額で判定するかが変わります。税込経理方式とは、消費税を購入価格に含めて帳簿へ記録する方法です。税抜経理方式とは、本体価格と消費税を分けて記録する方法です。
例えば、税抜38万円、消費税3万8,000円の設備は、税抜経理を採用している会社では38万円を基準に判断できる可能性があります。税込経理を採用している会社では41万8,000円となるため、基準を超えます。経理方式を案件ごとに使い分けるのではなく、会社が継続して採用している方式に沿って判定しましょう。
値引きや補助金を安易に差し引かない
販売店による通常の値引きは、値引き後の購入代金を基礎に取得価額を計算します。一方、補助金を受け取る予定だからという理由だけで、購入価格から補助金額を差し引いて40万円未満と判断することは避けましょう。補助金の会計処理や圧縮記帳の適用によって扱いが変わるため、採択通知、交付要綱、請求書を税理士へ共有して確認します。
社内運用例
- 設備投資申請に見積書だけでなく、送料、設置費、補助金、下取り、値引きの有無を記載
- 発注前の段階で判定する
- 決算前に経理がまとめて確認
取得価額チェックリスト
□ 本体価格を確認した
□ 送料・運送費を確認した
□ 据付費・設定費を確認した
□ 税込経理・税抜経理を確認した
□ 値引き後の金額を確認した
□ 下取りや補助金の処理を確認した
□ 一式で使用する周辺機器を確認した
40万円未満かどうかは、本体価格だけではなく、使用できる状態にするまでの費用を含めた取得価額で確認しましょう。
設備投資の判断、
節税だけで決めていませんか?
建設用重機や車両、工具の導入では、税務上の処理だけでなく、資金繰りや投資効果まで含めた判断が重要です。
自社の利益計画や設備投資の状況に合わせて、実務に落とし込むための進め方をご相談いただけます。
※設備投資の進め方や社内運用の整理についてご相談いただけます。
※個別の税務判断については、税理士などの専門家への確認が必要です。
※無理な営業は行いません。
特例を使うために会社側で確認する要件
取得価額が40万円未満でも、すべての会社が自動的に少額減価償却資産の特例を使えるわけではありません。会社規模、申告方法、資産の使用時期、年間上限、申告書への明細添付などを確認する必要があります。設備の購入判断と税務上の適用判断を分けて管理しましょう。
対象となる中小企業者等かを確認する
特例は、青色申告を行う一定の中小企業者等が対象です。資本金や出資関係、常時使用する従業員数などによって対象外になる場合があります。2026年4月1日以後に取得などをする資産については、本制度の対象となる法人から、常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されています。
年300万円の上限を設備台帳で管理する
少額減価償却資産の特例で全額を損金にできる取得価額の合計は、1事業年度当たり300万円が上限です。事業年度が1年未満の場合は、月数に応じて上限額を計算します。
例えば、35万円の設備を10台購入すると、取得価額の合計は350万円です。すべての設備が40万円未満でも、350万円全額に特例を適用できるわけではありません。どの資産に特例を適用するかを検討し、上限を超える資産は通常の減価償却などで処理します。
購入だけでなく事業で使い始める必要がある
原則として、特例を適用するには対象資産を取得し、その事業年度中に事業の用に供する必要があります。
「事業の用に供する」とは…
資産を本来の業務目的で使用できる状態にして、実際に使用を開始することです。
決算日が3月31日の会社が3月25日に測量機器を注文しても、納品と使用開始が4月5日であれば、3月期の処理にはできません。倉庫へ納品されただけで設定や検査が終わっていない場合も、使用開始と判断できないことがあります。
改善のコツは、納品書に加えて使用開始確認書を残すことです。現場責任者が使用開始日、使用現場、管理番号を記入し、経理へ提出する運用にすると、決算時の確認が容易になります。
使用開始確認テンプレ
資産名:
資産管理番号:
納品日:
設置・設定完了日:
使用開始日:
使用現場・部署:
確認者:
使用状況が分かる写真・記録:有/無


利益を圧縮するだけでなく手元資金を守る投資計画を立てる


少額減価償却資産の特例を使うと、通常の減価償却より早く費用を計上できるため、購入年度の課税所得を抑えられる可能性があります。ただし、設備を購入すると現金は確実に減ります。税金を減らすことだけを目的に不要な設備を購入すると、納税額以上に手元資金を失います。
節税額と支出額を分けて考える
例えば、38万円の設備を購入し、その全額を損金に算入できたとしても、38万円がそのまま戻ってくるわけではありません。法人税等の実効税率を仮に30%として単純計算すると、税負担の減少額は約11万4,000円です。一方、設備購入による現金支出は38万円です。
設備が不要であれば、約11万4,000円の税負担を減らすために38万円を支出したことになります。購入後の生産性向上、外注費削減、受注増加、安全性向上などを含めて投資効果を判断しましょう。
- 作業時間を月何時間削減できるか
- レンタル費や外注費を年間いくら削減できるか
- 対応できる工事の種類や件数が増えるか
- 故障や事故による休業リスクを減らせるか
- 購入後の維持費や保険料はいくらかかるか
決算前の駆け込み購入を避ける
決算直前に設備投資を検討すると、相見積もりや機種比較が不十分になりやすく、納品や設定が決算日に間に合わない可能性も高まります。現場から急いで申請が上がり、経理が取得価額を確認できないまま発注することもあります。
- 決算月の2〜3か月前に設備投資候補を集める
- 経営者、工事部、経理部で必要性と納期を確認し、優先順位を付ける
- 特例の残額も同時に確認
- 税務と現場の両面から購入時期を判断
通常の減価償却を選ぶ判断も持つ
特例を使える資産であっても、必ず購入年度に全額を損金へ算入しなければならないわけではありません。今期の利益が少なく、翌期以降に利益が増える見込みであれば、通常の減価償却で費用を配分する方法も検討できます。
また、金融機関へ決算書を提出する会社は、利益を圧縮した結果が融資審査や財務指標へ与える影響も確認しましょう。税負担、手元資金、利益水準、融資計画をまとめて判断することが重要です。
設備投資稟議テンプレ
購入目的:
解決する現場課題:
取得価額見込額:
年間の維持費:
削減できる作業時間・外注費:
使用開始予定日:
投資回収予定期間:
特例適用後の使用累計額:
通常償却との比較:
税理士・金融機関への確認事項:


設備投資と税務処理を社内で回す運用手順
少額減価償却資産の判定を経理担当者だけに任せると、請求書が届いた時点で初めて購入を知ることになります。その段階では、見積内容の変更、納期調整、設備の組み合わせ変更が難しくなります。購入を申請する現場、承認する経営者、帳簿へ登録する経理が同じ情報を確認できる流れを作りましょう。
発注前に経理確認を入れる
設備購入の申請時には、見積書、仕様書、使用目的、使用開始予定日を添付します。取得価額が35万円以上など、基準額に近い案件は経理確認を必須にすると、送料や設置費を含めた結果40万円以上になる事故を防げます。
現場が急ぎで購入する場合も、チャットや口頭だけで承認せず、最低限の項目をフォームへ入力します。申請記録が残れば、経理は決算時に購入理由や使用開始日を再確認する手間を減らせます。
納品後に資産台帳へ登録する
納品後は、請求書の金額、納品日、使用開始日、設置場所、管理責任者を固定資産台帳または少額資産台帳へ登録します。固定資産台帳とは、会社が保有する設備の取得日、取得価額、耐用年数、設置場所などを管理する一覧です。
少額減価償却資産の特例によって購入年度に全額を損金算入した資産も、現物管理まで不要になるわけではありません。工具やタブレットは現場間を移動しやすいため、資産管理番号を付け、保管場所と利用者を記録しましょう。
月次で300万円の使用状況を共有する
月次決算や経営会議では、特例を適用する予定の資産合計額を共有します。「年間上限300万円、使用済み220万円、申請中60万円、残額見込20万円」のように表示すれば、決算前の購入判断がしやすくなります。
- 申請内容と見積書が一致している
- 取得価額の見込額を確認している
- 会社が対象者要件を満たしている
- 年度内の納品・使用開始を確認している
- 年300万円の上限残額を確認している
- 資産台帳へ登録している
- 申告書へ必要な明細を添付する予定である
法人が特例を適用する場合は、対象資産の取得価額に相当する金額を損金経理し、確定申告書等へ所定の明細書を添付する必要があります。経理処理だけで完結させず、申告を担当する税理士とも一覧を共有しましょう。
社内運用ルール例
1.10万円以上の設備購入は事前申請する
2.35万円以上の設備は経理確認後に発注する
3.納品後3営業日以内に使用開始日を報告する
4.経理は月末に特例使用額と残額を更新する
5.判断が難しい設備は発注前に税理士へ確認する
6.決算月の設備購入申請期限を事前に周知する
発注前、納品時、月次、決算時の確認担当を決め、設備情報を一つの台帳へ集約することで判定漏れを防げます。
まとめ:設備投資は金額基準と使用開始日を発注前に確認する


- 10万円未満の少額資産、20万円未満の一括償却資産、40万円未満の少額減価償却資産特例を区別すること
- 取得価額、対象者要件、年300万円の上限、事業年度内の使用開始を確認
明日から試せる一歩は、設備購入申請書へ「取得価額見込額」と「使用開始予定日」の欄を追加することです。現場、経理、経営者が同じ台帳を確認し、基準額に近い設備は発注前に税理士へ相談しましょう。
制度を単発の節税策として扱わず、設備投資の必要性、資金繰り、利益計画を含めた社内ルールとして定着させることが重要です。
設備投資の判断、
節税だけで決めていませんか?
建設用重機や車両、工具の導入では、税務上の処理だけでなく、資金繰りや投資効果まで含めた判断が重要です。
自社の利益計画や設備投資の状況に合わせて、実務に落とし込むための進め方をご相談いただけます。
※設備投資の進め方や社内運用の整理についてご相談いただけます。
※個別の税務判断については、税理士などの専門家への確認が必要です。
※無理な営業は行いません。









