新築中心で集客と売上を組み立ててきた工務店ほど、着工数の減少局面では先行きが読みづらくなります。問い合わせ数が減るだけでなく、受注できても値引き圧力が強く、現場の手間ばかり増えて利益が残りにくい状態になりやすいです。そこで検討したいのが、リノベーション特化型工務店への転換です。
ただし、単に「これからはリフォームを強化する」と決めるだけでは失敗します。新築とリノベーションでは、商談の進め方、見積の考え方、現地調査の深さ、顧客の不安、必要なスタッフ連携が大きく違います。現場が躓くポイントは、売る商品を変える前に、社内の判断基準と運用ルールを変えないことです。この整理がないまま進めると、営業は何を提案してよいか迷い、現場は想定外対応に追われ、経営者は粗利が読めなくなります。
この記事では、リノベーション特化型工務店への転換を検討する会社向けに、狙うべき市場の絞り方、高単価商品への組み立て方、営業現場での提案方法、粗利と体制の整え方までを実務目線で整理します。経営判断だけでなく、現場監督、営業、広報、バックオフィスまで社内で共有しやすい形でまとめます。

新築の反響が減ってきたのでリフォームも取りたいですが、単価が低くなりそうで踏み切れません。



リフォームは細かい工事をたくさん取ればよいと思っていましたが、それだと忙しいだけで利益が残らない気がします。
この記事で整理するのは、どの顧客に絞るか、どの工事を主力にするか、どうやって高単価でも選ばれる体制をつくるかという判断軸です。
新築依存から抜け出すには「工事種別」ではなく「事業構造」を見直しましょう


リノベーション特化型工務店への転換を考えるとき、最初にやるべきことは「新築が減ったからリフォームもやる」という足し算の発想をやめることです。重要なのは、受注の入口から粗利の残し方まで、事業構造そのものを組み替えることです。新築は土地条件、資金計画、間取り提案を軸に商談が進みやすい一方、リノベーションは現状の不満、暮らし方、将来設計、建物の制約を踏まえて提案を組み立てる必要があります。
価格競争に入ると忙しいのに利益が薄くなります
小規模修繕を幅広く受ける形でリフォーム参入すると、問い合わせ数は増えても、現地確認、見積作成、工程調整の件数が膨らみます。1件ごとの売上が小さいため、営業と現場の稼働が分散しやすく、利益管理も難しくなります。たとえば、外壁補修、水回り交換、内装張り替えを何でも受ける会社は、一見仕事が増えたように見えても、移動時間や段取り時間が増え、粗利率が下がることが多いです。
高単価化するなら「暮らしの再設計」を売る必要があります
高単価リフォームで生き残るには、設備交換や補修ではなく、暮らし全体を見直す提案に軸足を置くことが重要です。リノベーションとは、古くなった部分を直すだけでなく、住まいの使い方そのものを再設計する工事です。たとえば、子どもの独立後に間取りを見直したい夫婦、実家を二世帯向けに整えたい家族、築古住宅を断熱改修して快適に住み継ぎたい顧客は、単なる価格比較ではなく、提案力で会社を選びます。
このときの失敗しやすいポイントは、受注したい気持ちが先に立ち、全方位で対応しようとすることです。実際には、誰に何を売るかを絞らないと、広告表現も、営業トークも、施工体制も定まりません。経営層はまず、自社が今後3年でどの領域なら勝ちやすいかを明確にしましょう。現場を回す運用イメージとしては、問い合わせ段階で案件を分類し、低単価修繕は協力会社紹介か限定受注、高単価リノベーションは社内主力案件として扱う線引きを決めておくことが有効です。
事業転換の判断テンプレ:
①今後伸ばす主力商品は何か
②誰の悩みを解決するか
③平均受注単価の目標はいくらか
④粗利率は何%を下回らないか
⑤受けない工事は何か
リノベーション特化への転換は、工事メニューを増やすことではなく、受注条件と利益構造を先に決めることが出発点です。
狙う顧客を絞ると高単価でも選ばれやすくなります
リノベーションで利益を確保したいなら、最初に市場を絞りましょう。誰でも相手にする営業は、一見間口が広いようで、実際には何が強みの会社か伝わりにくくなります。特に新築着工数が減る局面では、地域内の工務店、リフォーム会社、ハウスメーカー系の競争が強まるため、総合対応を掲げるだけでは埋もれやすいです。そこで有効なのが、ターゲット、建物種別、悩みの種類を組み合わせたニッチ戦略です。
おすすめは「築年数×家族構成×目的」で絞る方法です
たとえば、築25年以上の戸建てに住む50代夫婦向け、相続した実家の再生を考える40代向け、中古住宅購入後の全面改修を希望する子育て世帯向けなど、条件を重ねると提案が具体化しやすくなります。こうすると、ホームページの訴求、施工事例の見せ方、ヒアリング項目、見積の出し方まで統一しやすくなります。営業現場でも、「この会社は自分たちの悩みをわかっている」と感じてもらいやすくなります。
比較表で受注すべき案件と避ける案件を分けましょう
案件の見極めを感覚で行うと、忙しいのに利益が残らない状態に戻ります。そこで、受注判断を見える化しておくことが重要です。バックオフィスや営業事務も同じ基準を共有すると、初回問い合わせの段階で振り分けしやすくなります。
| 項目 | 主力で狙う案件 | 慎重に判断する案件 |
|---|---|---|
| 受注単価 | 300万円以上の全面改修・性能向上 | 30万円未満の単発修繕 |
| 顧客ニーズ | 暮らし改善、断熱、動線改善、資産活用 | とにかく最安優先 |
| 提案余地 | 間取り、素材、性能、将来設計まで提案可能 | 設備交換のみで比較されやすい |
| 現場運用 | 工程計画を組みやすく粗利管理しやすい | 緊急対応が多く段取りが崩れやすい |
| 紹介再現性 | 施工事例化しやすく次の受注につながる | 事例化しにくく単発で終わりやすい |
失敗しやすいポイントは、問い合わせが来た案件を断れずに全て受けてしまうことです。判断が必要な項目を比較し、主力案件に人と時間を寄せる必要があります。たとえば、工務店の営業担当が「昔からの紹介だから断りにくい」と小規模案件を抱え込み続けると、本来注力すべき高単価案件の提案準備が薄くなります。改善のコツは、受注基準を対外的にも社内的にも明文化することです。運用イメージとしては、問い合わせフォームや初回電話で、築年数、希望予算、工事範囲、入居状況、希望時期を確認し、商談対象を選別しましょう。
初回問い合わせの確認テンプレ:
・建物種別は戸建てかマンションか
・築年数は何年か
・工事範囲は部分改修か全面改修か
・予算感はあるか
・いつまでに住み方を変えたいか
高単価案件を安定して取りたいなら、誰でも受ける体制ではなく、自社が勝てる顧客像を先に細かく定義しましょう。


高単価リノベーションは「商品化」すると営業しやすくなります


リノベーションで単価を上げるには、毎回ゼロから提案するのではなく、ある程度パッケージ化された商品に落とし込むことが重要です。商品化とは、価格、提案範囲、標準仕様、追加費用の考え方を整え、営業と現場の説明を揃えることです。これが曖昧だと、営業ごとに提案内容がぶれ、現場ごとに原価が変わり、経営側が利益計画を立てにくくなります。
おすすめは3段階の商品設計です
たとえば、「部分改善プラン」「暮らし改善プラン」「性能向上フルリノベプラン」のように3段階で設計すると、顧客に選択肢を見せながら上位提案につなげやすくなります。標準仕様とは、毎回変えずに基本とする設備や工法のことです。標準仕様を決めると、見積の精度が上がり、仕入れや施工手順も安定します。工務店の実務シーンでは、キッチン単体交換よりも、キッチンとダイニングの動線改善、収納改修、断熱内窓のセット提案のほうが単価も満足度も上げやすいです。
「安いか高いか」ではなく「何が変わるか」を言語化しましょう
顧客は工法や材料の違いだけでは高単価を納得しにくいです。そこで、工事後の暮らしの変化を具体的に伝える必要があります。たとえば、断熱改修なら「光熱費が下がる可能性があります」では弱く、「朝の脱衣所の寒さが和らぎ、ヒートショックの不安を減らしやすい工事です」と生活実感に寄せた説明にしましょう。ヒートショックとは、急激な温度差で血圧が大きく変動し、体に負担がかかる現象です。
- 価格ではなく、改善される生活シーンを先に伝える
- 標準仕様と追加オプションの境界を明確にする
- 施工後の使い方や将来の暮らし方まで話す
- 設備単体提案ではなく、空間全体で見せる
失敗しやすいポイントは、見積書の項目だけを丁寧に説明して満足してしまうことです。顧客は工事項目より、自分の悩みがどう解消されるかを知りたいです。改善のコツは、営業資料や初回ヒアリングシートに「現状の不満」「工事後の変化」「追加提案余地」を並べておくことです。運用イメージとしては、営業が持ち帰った情報を設計や現場監督と共有し、標準化したプランに当てはめてから提案する流れにすると、再現性が高まります。
提案書の基本テンプレ:
①現状の困りごと
②工事で変わる暮らし
③標準仕様に含まれる内容
④追加提案が必要な項目
⑤概算予算と工期の目安
営業で失敗しないためには現地調査とヒアリングを仕組みにしましょう
リノベーション営業は、初回商談の質で受注率が大きく変わります。新築のように土地条件や間取り希望を整理するだけでは足りず、今の住まいで何に困っているか、どこまで変えたいか、予算に対する優先順位は何かを掘り下げる必要があります。ここが浅いと、見積提出後に「思っていた提案と違う」となりやすく、価格勝負に引き込まれます。
現地調査では建物確認と生活確認を分けて考えましょう
現地調査というと寸法取りや劣化確認に意識が向きがちですが、実際には生活確認も同じくらい重要です。現地調査とは、現場で建物の状態や工事条件を確認する工程です。たとえば、築30年の戸建てでキッチン改修を検討している場合、配管位置や床下状況だけでなく、誰が料理をしているか、家電の置き場に困っているか、買い物動線はどうかまで確認すると提案の質が上がります。
その場で約束しすぎると後工程が苦しくなります
受注したい気持ちから、その場で「それもできます」「予算内で収まります」と言い切るのは危険です。既存建物は解体して初めてわかることも多く、補強、配管更新、断熱追加などの変動要素があります。現場監督と設計が後から苦しくなる典型例です。改善のコツは、初回商談では方向性と優先順位までを整理し、金額と施工範囲の確定は社内確認後に行う運用にすることです。
- 生活上の不満は何か
- 工事後に一番変えたい行動は何か
- 絶対に必要な工事と、できればやりたい工事は何か
- 住みながら工事か、一時退去か
- いつまでに完成したいか
工務店の実務では、営業だけで現地調査に行くと情報が足りず、再訪問が発生しやすいです。高単価案件ほど、初期段階で現場視点を入れることが重要です。運用イメージとしては、初回は営業と現場担当の同行、または営業が統一フォーマットで確認し、社内共有会議で提案方向を決める流れにしましょう。こうすると、失敗しやすいポイントである見積後の手戻りを減らしやすくなります。
現地調査ヒアリングテンプレ:
・今の住まいで毎日不便なこと
・将来の家族構成の変化
・残したい部分と変えたい部分
・予算の上限と優先順位
・工事中の生活条件
粗利を残すには見積と社内連携のルールを先に決めましょう


高単価リノベーションを受注しても、粗利が残らなければ事業転換は成功しません。粗利とは、売上から材料費や外注費など直接かかった原価を差し引いた利益です。リノベーションでは、解体後の追加工事、顧客要望の増加、工程変更によって原価が膨らみやすいため、見積時点のルール設計が重要です。特に新築中心で動いてきた会社は、リノベーション特有の不確定要素を甘く見積もりやすいです。
追加費用の扱いを曖昧にすると現場も営業も苦しくなります
たとえば、解体後に下地劣化が見つかった、断熱材が想定より必要だった、電気配線の更新範囲が広がったという場面は珍しくありません。ここで追加費用の説明ルールがなければ、営業は言いづらく、現場は泣いて対応する流れになります。失敗しやすいポイントは、契約前に不確定範囲を言語化していないことです。改善のコツは、見積書と提案書の両方に、想定外対応の範囲と判断手順を入れることです。
営業・現場・事務で同じ原価感覚を持ちましょう
経営者だけが粗利を気にしていても、現場で共有されていなければ改善しません。営業は受注優先、現場は品質優先、事務は請求処理優先になりがちですが、最終的には同じ案件の採算でつながっています。たとえば、営業がサービス工事を増やし、現場が追加対応を記録せず、事務が請求漏れを起こすと、利益はすぐ崩れます。運用イメージとしては、案件ごとに見積時粗利、契約後変更、完工後実粗利を確認する場を月1回でも設けることが有効です。
- 契約前に不確定範囲を明記する
- 追加工事の承認フローを決める
- 現場変更を写真と文章で残す
- 請求前に変更内容を事務へ共有する
工務店の実務シーンでは、現場監督が顧客から直接頼まれた軽微な変更を、そのまま善意で受けてしまうことがあります。小さな変更でも積み重なると利益を削ります。改善の判断軸は、顧客満足のために柔軟対応する場面と、契約変更として扱う場面を分けることです。社内で回すには、現場監督が迷わず使える承認テンプレと、事務が請求に反映できる報告テンプレをセットで持ちましょう。
追加工事承認テンプレ:
現場状況/追加が必要な理由/追加費用の目安/工期への影響/顧客説明の要点/社内承認者
高単価案件でも利益が残らない会社は、受注力ではなく追加変更の管理ルールに穴があることが多いです。


まとめ|ニッチ戦略で勝つには「受ける案件を絞る勇気」が必要です
リノベーション特化型工務店への転換で重要なのは、何でも受けることではなく、誰に何をどう売るかを明確にすることです。新築着工数が減る中でも、高単価リフォームで生き残る会社は、ターゲットを絞り、商品を整え、現地調査と見積の運用を仕組みにしています。つまり、勝ち筋は「案件数を増やすこと」ではなく「利益が残る案件に集中すること」です。
明日から試せる一歩としては、まず直近1年の受注案件を見直し、単価、粗利、紹介率の高かった案件の共通点を洗い出しましょう。そのうえで、今後主力にする顧客像を1つ決め、問い合わせ時の確認項目と提案テンプレを整えると動きやすいです。社内共有では、経営層だけで決めず、営業、現場、事務が同じ判断基準を持てるように言葉を揃えることが定着の近道です。









