「親の代からのやり方を変えたいけれど、反発が怖い」
「現場中心の体制を見直したいけれど、どこから手をつければいいのか分からない」
工務店や建設業で事業承継を行う若手経営者の多くが、同じ悩みを抱えています。
代替わりは単なる“引き継ぎ”ではなく、会社の未来を再構築する大きなチャンスです。

昔からのやり方で十分やってこれた。お客様も満足してるし、急に変える必要はない。



でも、時代が変わってきています。IT化や採用の仕組みを整えないと、これからは厳しいと思うんです。
この記事では、実際に事業承継をきっかけに経営改革を成功させた若手社長の実例と、具体的なステップを紹介します。
親子間・世代間の壁を越えて、会社を次のフェーズへ進めるためのヒントをお伝えします。
1. 承継直後の「課題整理」が成功の分かれ道


経営改革を始める前に、まず行うべきは現状の「棚卸し」です。
多くの工務店が失敗するのは、「新しい取り組み」を先に始めてしまうこと。
まずは現状の課題を正確に把握することから始めましょう。
| 項目 | 現状 | 理想 | 改善の方向性 |
|---|---|---|---|
| 営業スタイル | 口コミ中心・紹介頼み | 新規顧客開拓の仕組み化 | HP・SNSを活用した集客導線の整備 |
| 財務管理 | 現金主義・属人的処理 | キャッシュフロー管理 | 会計のクラウド化・見える化 |
| 人材体制 | 家族中心・ベテラン依存 | 標準化された育成体制 | 業務マニュアル・OJT仕組み化 |
| 現場管理 | 紙ベース | デジタル共有 | 現場アプリ導入・進捗一元化 |
この表を基に、どこに“最もムダ”があるのかを洗い出すことが第一歩です。
ポイント
- 現場・事務・営業・経営の4領域に分けて整理
- 数字(時間・コスト・人)で“どの課題が大きいか”を見える化
- 「やめること」「減らすこと」から改革を始める
2. 「経営理念の再定義」で組織の軸をつくる
代替わり後、社員が最も不安を感じるのが「会社の方向性が変わるのでは?」という点です。
この不安を取り除くために重要なのが、経営理念の再定義です。
理念を再構築する3ステップ
- 親の代の想いを言語化する
創業時の想い・地域への貢献などをヒアリングでまとめる。 - 現代の課題に合わせて再編集する
たとえば「地域の家づくりを守る」→「地域の暮らしを次世代へつなぐ」など。 - 社内外へ発信する
社員ミーティングや採用ページ、HPなどで明文化して共有する。
理念を明確にすると、若手社長が打ち出す“新しい挑戦”にも説得力が生まれます。
経営改革は「何を変えるか」よりも、「なぜ変えるのか」を共有することが先です。
3. 数字を“感覚”から“データ”に変える
親世代の多くは「経験と勘」で経営をしてきました。
しかし今の時代、感覚だけでは資金繰りや採算の判断が難しくなっています。
若手社長がまず着手すべきは、数字を見える化する経営管理です。
| 管理項目 | 従来の方法 | 改革後の方法 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 売上・原価管理 | 手書き台帳・Excel | クラウド会計ソフト連携 | 即時で利益率を確認 |
| 工事別損益 | 感覚で把握 | 案件ごとに原価登録 | 収益構造を分析可能に |
| 支出管理 | 現金・紙領収書 | クレカ+自動仕訳 | 手間削減・ミス防止 |
| 月次会議 | 感想ベース | 数字レポート共有 | 課題発見が早くなる |
実践のコツ
- 会計ソフト(freee・弥生)をクラウド化する
- 原価や経費を「現場単位」で記録する習慣をつける
- 収益性の低い案件を早期に見抜き、撤退判断を迅速化する
4. 世代間ギャップを“分断”ではなく“融合”に変える


親子承継で最も衝突が起こるのは、「やり方の違い」です。
しかし、改革を進める上で大切なのは“新旧の融合”です。
若手社長が一方的に仕組みを変えるのではなく、ベテランの知見を活かしながら少しずつ制度を更新することが理想です。
具体例
- 現場のベテランに「新人教育担当」を任せる
- 新システム導入時は、1現場だけで試験運用してから全社導入
- 会議では「旧来の強み+新しい発想」をテーマ化
社長交代のタイミングは「世代交代」ではなく「価値の共創」と捉えるべきです。
社員を巻き込むことで、変化への抵抗が“参加意識”へと変わります。
5. 経営改革の成功は「外部視点」と「小さな実験」
若手社長が孤立しやすいのは、「社内に相談できる相手がいない」こと。
そんなときは、外部の専門家や他社の若手経営者との交流が突破口になります。
成功している若手経営者の共通点
| 項目 | 実践内容 |
|---|---|
| 外部視点を取り入れる | コンサル・金融機関・同業交流会などで定期意見交換 |
| 小さな実験を繰り返す | 新サービスや広告施策を限定地域で試験運用 |
| 社員を巻き込む | 変化を“トップダウン”ではなく“プロジェクト化”して進行 |
| 成果を数字で評価 | 「残業削減率」「見積スピード」「成約率」などKPI設定 |
行動ステップ例
経営改革を現実的に進めるための基本ステップは以下のとおりです。
- 1か月目:現状分析(財務・業務・組織)
- 2か月目:課題の優先順位付け
- 3か月目:改革プロジェクトチームを発足
- 4か月目:テスト施策を1つ導入(例:見積りDX化)
- 5か月目:効果測定・改善サイクルを設定
この「小さく始める→成果を共有→拡大する」の流れを作ると、社内の理解が得られやすくなります。
6. 成功事例:兵庫県の工務店D社が実現した“承継からの進化”
D社(社員15名)は、2代目社長(32歳)が承継した際、業務効率化と組織文化改革を同時に進めました。
結果、3年で以下の成果を実現しました。
| 項目 | 承継前 | 承継後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 | 4.5% | 8.2% | +82% |
| 契約件数 | 年32件 | 年48件 | +50% |
| 平均残業時間 | 月30h | 月15h | -50% |
| 離職率 | 25% | 5% | 大幅改善 |
改革のポイント
- 会計をクラウド化し、原価・利益をリアルタイムで把握
- 若手社員中心の「改善提案会」を毎月実施
- 経営理念を刷新し、“地域の未来をつくる工務店”として再ブランディング
「承継=守る」ではなく、「承継=進化させる」ことができた好例です。
まとめ|事業承継は“終わり”ではなく“始まり”
工務店・建設業の事業承継は、単に社長が交代するイベントではありません。
それは、会社を未来へ再構築するタイミングです。
| チェックリスト | 状況 |
|---|---|
| 現状の課題を棚卸しできた | □ |
| 経営理念を再定義した | □ |
| 数字をもとに経営判断できる体制を構築した | □ |
| 新旧世代が協働する文化をつくった | □ |
小さな改善を積み重ねることで、「承継」は“守り”から“攻め”へと変わります。
そして、若手社長の挑戦が、地域の建設業界全体の未来を動かしていきます。




