「見積作成に時間がかかる」「紙やExcelで管理していてミスが多い」。多くの工務店が、見積書・請求書の作成と管理に課題を抱えています。とくに、手書き伝票を事務所で打ち直したり、現場から写真やメモだけ送られてきて経理が整理し直したりと、二度手間・三度手間が発生しがちです。
こうしたムダを減らすシンプルな方法が、「現場からも事務所からも使える見積書アプリ」を導入することです。うまく選べば、見積のスピードアップだけでなく、粗利管理や請求漏れ防止にもつながります。

見積はずっと手書きとExcelです…。アプリが良いのは分かるんですが、現場の職人が使えるか不安で。



見積書アプリも種類が多すぎて、どれを選べばいいか分かりません。工務店に合うタイプを知りたいです。
工務店の見積書作成は、今でも手書きやExcelで対応している会社が多いです。しかし、紙伝票やバラバラなExcelファイルの管理には限界があります。本記事では、現場でも使いやすい見積書アプリの種類と選び方、運用のコツを実務目線で解説します。
なぜ「手書き・Excel見積」から卒業すべきなのか


まずは、手書きやExcelベースの見積作成を続けることで、どのような問題が起きやすいかを整理します。
手書き・Excel中心の見積で起こりがちな課題
手書きやExcel運用には、次のようなリスクがあります。
- 見積ごとにフォーマットがバラバラになり、ミスや漏れが増える
- 原価や単価マスタが統一されず、担当者によって利益率が大きくブレる
- 紙の控えやExcelファイルが散在し、過去の見積を探すのに時間がかかる
- 請求書・入金管理と連動しておらず、請求漏れが発生しやすい
- 社内で共有しづらく、引き継ぎ・属人化の問題が残る
とくに「過去の似た工事の見積を探して流用する」作業に時間がかかっている会社は多く、見積スピードの遅さが機会損失につながっていることも少なくありません。
バックオフィス全体の効率化の考え方については『工務店のバックオフィス業務を50%削減した実例|経理・勤怠・共有のコツ』も参考になります。
工務店に向いている「見積書アプリ」3つのタイプ
ひと口に「見積書アプリ」といっても、工務店に向いているタイプは大きく3つに分けられます。ここでは、具体的なサービス名ではなく「どんな機能を持ったタイプか」にフォーカスして整理します。
| タイプ | 特徴 | 向いている工務店 |
|---|---|---|
| タイプ1:シンプル見積特化型 | 見積機能に絞り込み操作が簡単 | まずは手書き・Excelから卒業したい会社 |
| タイプ2:現場連携型アプリ | スマホやタブレットから現場で入力できる | 営業・現場が移動の多い会社 |
| タイプ3:会計・請求連動型 | 会計ソフト・請求書管理とつながる | 粗利管理や請求漏れ防止まで踏み込みたい会社 |
それぞれのタイプのメリット・注意点を押さえたうえで、自社の規模や体制に合うものを選ぶことが大切です。
タイプ選びのポイントは以下の3つです
- 現場で入力するのか、事務所でまとめて入力するのか
- 見積だけ改善したいのか、請求・会計まで一気通貫にしたいのか
- 「今のメンバーで運用できるかどうか」(難しすぎないか)
高機能なツールでも、現場や事務のメンバーが使いこなせなければ意味がありません。最初は「シンプルさ」を優先して選ぶのも有効です。
タイプ1:まずは紙・Excelから卒業したいなら「シンプル見積アプリ」
最初の一歩としておすすめなのが、見積機能に特化したシンプルなアプリです。余計な機能が少なく、紙やExcelからの移行ハードルが低いのが特徴です。
シンプル見積アプリの代表例


ツカエル見積・請求書オンライン
クラウド型の見積・請求書サービス。ブラウザからすぐ使えて、テンプレ登録や品目登録で繰り返しの見積作成を効率化できます。


リモデラ事務
建設職人向けに作られたスマホアプリ。現場で撮った写真とセットで見積・請求ができる点が特徴で、小規模なリフォーム・工事店と相性が良いです。


Misoca(ミソカ)
中小事業者全般向けの見積・請求クラウド。建設業専用ではありませんが、シンプルなUIで、取引先が少なめな工務店には導入しやすいタイプです。
シンプル見積アプリの主な機能
- 見積テンプレート(自社ロゴ入りのフォーマット)
- よく使う工事項目・単価の登録(単価マスタ)
- 消費税・値引き・諸経費の自動計算
- PDF出力・メール送付
紙やExcel運用と比べると、見積書1件あたりの作成時間を大幅に短縮できるうえ、単価ミスや計算ミスも減らせます。
シンプル見積アプリを選ぶときのチェックポイント
チェックすべきポイントは次の通りです。
- 自社のロゴ・社判・振込先などを簡単に設定できるか
- よく使う項目を「テンプレ登録」して再利用できるか
- 複数台のパソコンから同じデータにアクセスできるか
- 請求書への転用機能があるか(見積 → 請求へ変換)
特別な連携は不要で、まずは「見積・請求のフォーマットを統一する」ことをゴールにすると、社内の混乱を最小限に抑えられます。
見積以外の業務効率化の考え方は『工務店のバックオフィス業務を50%削減した実例|経理・勤怠・共有のコツ』とも相性が良いテーマです。
タイプ2:現場からも入力したいなら「現場連携型見積アプリ」
営業や現場監督が移動の多い工務店では、スマホやタブレットから直接見積の元データを入力できる「現場連携型アプリ」が便利です。
現場連携型アプリの代表例


サクミル
工事案件の管理、見積・請求、原価・粗利の把握などをクラウドで一元管理できる建設業向けシステム。受注確度や進捗を一覧で見られるので、「案件ボード+見積」のイメージに近いです。


KAKUSA
中小建設工事業者向け原価管理システムですが、見積・発注・請求・日報・原価をシンプル画面で一連管理できるクラウド。現場日報との連動まで見据えた「案件単位の見積・原価スタート」として使えます。
現場連携型アプリの特徴
- スマホ・タブレットから見積の下書きができる
- 現場で撮った写真やメモを案件ごとに保存できる
- 事務所のパソコンとリアルタイムでデータ共有できる
- クラウド上に案件ごとの履歴を蓄積できる
現場で概算見積を作っておき、事務所側で仕上げる運用にすることで、「見積作成のスタートが遅い」という課題を解消できます。
現場連携型を使いこなすためのポイント
- スマホが苦手な職人・監督でも入力できる画面か確認する
- 「入力する人」と「承認する人」の役割分担を決める
- 案件ごとに最低限入力する項目を絞る(項目を増やしすぎない)
機能が多すぎると現場で敬遠されやすいため、最初は「現場で撮った写真と簡単なメモを残す」など、シンプルな使い方から始めると定着しやすくなります。
LINEなどのコミュニケーションツールと組み合わせた現場管理の考え方は『LINEを使って現場管理を簡単にする方法【小規模工務店向け】』でも詳しく触れています。
タイプ3:請求・会計まで一気通貫にする「会計連動型見積アプリ」
見積だけでなく、請求・入金管理・会計ソフトまでつなげたい工務店には、「会計連動型」の見積・請求アプリが向いています。
会計連動型アプリの代表例


マネーフォワード クラウド請求書 + クラウド会計
クラウド請求書で見積・請求・納品・領収を作成し、そのデータをクラウド会計へ連携できる構成。建設業専用ではありませんが、会計事務所連携や銀行連携を重視する場合に選ばれやすい組み合わせです。


freee会計 + freee請求書
こちらも見積・請求と会計がセットになったクラウド。仕訳自動化やスマホからの入力など、「経理まわりのDX」を軸に据えるなら候補になります。
会計連動型アプリのメリット
- 見積から請求書・領収書まで一元管理できる
- 入金状況がひと目で分かり、滞留の把握がしやすい
- 会計ソフトにデータ連携でき、仕訳入力の手間を減らせる
- 案件別の売上・粗利が集計しやすくなる
管理コストはやや上がりますが、「どの案件がどれくらい利益を出しているか」「どの顧客からの入金が遅れているか」を把握しやすくなり、経営判断の精度が高まります。
導入前に確認すべき注意点
会計連動型は便利な一方で、次の点には注意が必要です。
- 月額費用が自社の規模に見合っているか
- 税理士事務所が対応できる会計ソフトと連携できるか
- 自社の勘定科目や管理の仕方にフィットするか
- 初期設定・マスタ整備にどれくらい工数がかかるか
補助金を活用して導入費用を抑えるケースも多いため、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金の対象かどうかも確認しておきましょう。補助金の申請フローについては『小規模事業者持続化補助金でHPをリニューアルする手順|採択率を高めるコツと注意点』も参考になります。
見積書アプリ導入の失敗パターンと、成功させるためのチェックリスト


見積書アプリは便利な一方で、「導入したものの使われない」「一部の社員しか使っていない」という失敗例も少なくありません。ここでは、ありがちな失敗パターンと、導入前に確認しておきたいポイントをまとめます。
ありがちな失敗パターン
- 機能を盛り込みすぎて、現場がついてこられない
- 「設定担当者」が決まっておらず、初期設定が進まない
- 部門ごとに使い方がバラバラで、データが揃わない
- 過去データの移行にこだわりすぎて、いつまでも本稼働しない
導入を成功させるためのチェックリスト
見積書アプリ導入を成功させるためのポイントは次の3つです。
- 社内で「設定担当者」と「現場サポート役」を決める
- 最初は機能を絞ってスタートし、徐々に拡張する
- 毎月1回、「運用の振り返りミーティング」を行う
すべてを一度に変えようとすると現場が混乱します。まずは1〜2現場で試験運用してから、全社に展開していくステップがおすすめです。
DXツール全般の導入時にも共通するポイントは『AIを使って施工事例紹介文を時短で書くコツ|工務店・リフォーム会社のための活用術』の考え方とも近い部分があります。
見積書アプリ導入後に意識したい「顧客コミュニケーション」のコツ
見積書アプリはあくまで「ツール」であり、顧客とのコミュニケーションが良くならなければ意味がありません。導入後は、次のような点も意識しておくと効果が高まります。
- 見積提出までのスピードを意識して短縮する
- 見積書に「提案理由」や「おすすめポイント」をひとこと添える
- 金額の根拠を分かりやすく説明できるようにしておく
- 見積提出後のフォロー連絡を仕組み化する
まとめ|自社のステージに合った見積書アプリから始めましょう


見積書アプリは、「どれが一番優れているか」ではなく、「自社の体制とステージに合っているかどうか」で選ぶことが大切です。
- まずは、手書き・Excelから卒業するシンプル見積アプリ
- 現場からも入力したいなら、スマホ対応の現場連携型アプリ
- 請求・会計まで一元管理したいなら、会計連動型アプリ
完璧なツールを探すよりも、「小さく始めて、運用しながら改善していく」姿勢が成果につながります。自社の課題と現場の実情を踏まえつつ、まずは1つの案件からでも試してみましょう。





