紙伝票から脱却!工務店のためのクラウド会計導入ステップと注意点まとめ

「領収書がデスクの上に山積みになっている」「現場ごとの原価がすぐに分からない」「月次の数字が出るのが遅くて経営判断が遅れる」。紙伝票やExcelで会計処理をしている工務店では、こうした悩みが日常的に起きています。

こうした状況を改善する手段として、近年多くの工務店が検討しているのがクラウド会計ソフトの導入です。ただ、「興味はあるけれど、どこから手を付ければよいか分からない」「税理士や事務担当の負担が増えないか心配」という声もよく聞きます。

紙の伝票やエクセルから脱却したいんですが、クラウド会計って本当に現場に合うのか不安です。

銀行連携や自動仕訳は便利そうですよね。導入の流れや注意点を整理できれば、一歩踏み出せそうです。

この記事では、工務店が紙伝票からクラウド会計へ移行する際の流れと注意点を、経営とバックオフィスの両面から整理していきます。


目次

なぜ工務店こそクラウド会計を導入すべきなのか

紙伝票・Excel管理のままだと起こりやすい課題

まず、現在の紙伝票やExcel管理でどのような問題が起こりやすいのかを整理します。

  • 現場ごとの原価をタイムリーに把握できない
  • 経理処理が「月末・月初」に集中し、担当者の負荷が高い
  • 仕訳入力が人手に依存し、ミスや漏れが発生しやすい
  • 経営者が最新の数字を見られず、投資判断が遅れる

特に、複数現場を同時に動かしている工務店では「今どの現場が利益を出しているか」を把握することが難しくなりがちです。紙とExcelだけでは、どうしてもリアルタイム性に限界があります。

バックオフィス全体の業務効率化については、『工務店のバックオフィス業務を50%削減した実例|経理・勤怠・共有のコツ』でも詳しく紹介しています。会計だけでなく、勤怠や情報共有と合わせて見直すことで、効果が一段と高まります。

クラウド会計の主なメリット

クラウド会計ソフトを導入することで、次のようなメリットが期待できます。

メリット内容
入力の自動化銀行口座・クレジットカード・電子マネーと連携し、入出金明細を自動取込・自動仕訳できる。
リアルタイムな数字把握インターネット環境があればどこからでも試算表を確認でき、現場別の収支も見やすくなる。
多拠点・リモート対応本社・支店・自宅など、場所を問わず同じ会計データを参照できる。
税理士とのデータ共有会計事務所とオンラインでデータを共有し、紙の資料受け渡しを減らせる。
バックアップ・更新不要ソフトのアップデートやバックアップをサービス側が行うため、IT管理の負担を減らせる。

経理担当者の作業負担を減らすだけでなく、経営者がタイムリーに数字を把握できることがクラウド会計導入の大きな価値です。経営判断とバックオフィスを一体で考えたい方は、『事業承継をチャンスに変える!若手社長が実践する経営改革の進め方』も参考になります。


クラウド会計導入前に整理しておくべき3つのポイント

クラウド会計の導入をスムーズに進めるには、「ソフトを契約する前の準備」が重要です。いきなり乗り換えようとすると、現場や事務が混乱しやすくなります。

1)現状の会計・経理フローを見える化する

まずは、今どのような流れで経理処理をしているのかを図解してみましょう。

整理するポイントは以下の3つです。

  • どのタイミングで伝票や領収書が経理に届くのか
  • どの帳票を誰が作成・確認しているのか
  • どの作業に時間がかかっているのか(ボトルネック)

紙伝票からクラウド会計に変えても、フローそのものが複雑なままだと効果が出にくくなります。まずは「そもそもの作業の流れ」を簡潔にすることが重要です。

2)税理士(会計事務所)との役割分担を確認する

すでに税理士と顧問契約をしている場合、クラウド会計導入は「税理士のやり方」との整合性をとる必要があります。

  • 仕訳入力をどこまで自社で行うのか
  • 試算表の作成は誰が担当するのか
  • 決算調整・申告書作成の流れはどうするか
  • クラウド会計ソフトの選定に関わってもらえるか

クラウド会計を扱った経験がある税理士であれば、導入から運用まで伴走してもらえるケースもあります。反対に「今のやり方を変えたくない」というスタンスの場合は、コミュニケーションに時間をかける必要があります。

3)現場・バックオフィスのITリテラシーを把握する

クラウド会計は、パソコンやスマホ・タブレットを使って操作します。経理担当だけでなく、現場監督や営業が「経費精算」や「現場原価の登録」に関わることも増えていきます。

次のような項目をチェックしておきましょう。

  • スマホで領収書を撮影し、アプリで送る操作に抵抗がないか
  • パソコンでの基本的な入力に問題はないか
  • 新しいツールに慣れるまで、どの程度のサポートが必要か

「現場のITスキルが低いからクラウド会計は無理」と決めつけるのではなく、最初は紙との併用期間を設けるなど、段階的な移行を前提に設計することがポイントです。

現場側のDX推進事例については、『LINEを使って現場管理を簡単にする方法【小規模工務店向け】』も参考になります。現場でのツール活用に慣れてもらうことで、会計以外の業務効率化にもつながります。


工務店がクラウド会計を導入する具体的な手順

ここからは、実際にクラウド会計ソフトを導入するまでの流れをステップごとに整理します。

クラウド会計導入の基本ステップ

  • STEP1:要件整理(現状フロー、必要な機能、予算)
  • STEP2:会計ソフトの候補を比較・選定
  • STEP3:科目体系・部門・現場コードの設計
  • STEP4:期中であれば期首からのデータ移行方法を決定
  • STEP5:銀行・クレジットカード・電子マネーとの連携設定
  • STEP6:試験運用(テスト期間)を行い、フローを微調整
  • STEP7:本格運用開始と社内周知・マニュアル整備

それぞれのステップで押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

STEP1:要件整理(現状フロー、必要な機能、予算)

会計ソフトを選ぶ前に、自社にとって必須の機能・あると便利な機能を整理します。

確認しておきたい主な要件は次のとおりです。

  • 現場別・部門別の損益管理がどこまで必要か
  • 見積・請求・入金管理も同じソフトで行いたいか
  • 給与計算や勤怠管理との連携は必要か
  • 月額コストの上限はいくらか(顧問料とのバランスも含めて)

ここで要件が曖昧なまま進めると、後から「この機能が足りない」「操作が複雑すぎる」といったミスマッチが起きやすくなります。バックオフィスの全体像を見直す際には、『工務店のバックオフィス業務を50%削減した実例|経理・勤怠・共有のコツ』の内容も役立ちます。

STEP2:会計ソフトの候補を比較・選定する

要件整理ができたら、複数のクラウド会計ソフトの無料トライアルやデモを活用しながら比較します。

比較のポイントは以下の3つです。

  • 現場別・部門別の管理がしやすいか
  • 経理担当者だけでなく、経営者も直感的に操作できるか
  • サポート体制(電話・チャット・オンライン講習など)が充実しているか

この段階で、税理士(会計事務所)の意見を聞きながら進めると、導入後のやり取りもスムーズになります。

STEP3:科目体系・部門・現場コードの設計

クラウド会計の効果を最大化するうえで重要なのが、勘定科目や部門・現場コードの設計です。ここを曖昧にしてしまうと、せっかくデータが蓄積されても「経営に使える形」で数字が見えません。

設計のポイントは、次のように整理できます。

  • 勘定科目は今のものをベースにしつつ、建設業特有の費目(外注費・材料費・現場経費など)を明確に区分する
  • 部門は「新築」「リフォーム」「不動産」など事業ごとに分ける
  • 現場コードは「年+連番+担当者」のように、誰が見ても分かるルールにする

最初から完璧を目指す必要はありませんが、「現場別に粗利を見る」「事業別に利益率を見る」といった目的を明確にしたうえで設計すると、後々の分析が格段にしやすくなります。


導入時にありがちな失敗と注意点

「一気に切り替えて現場が混乱する」パターン

もっとも多い失敗のひとつが、「今月から全部クラウドに切り替えます」と宣言してしまい、現場・事務が混乱するケースです。

スムーズに移行するためのポイントは次のとおりです。

  • 最初の1〜2ヶ月は紙とクラウドを併用し、テスト期間を設ける
  • まずは銀行連携や経費精算など、効果が分かりやすい部分から始める
  • 現場ごとに「試験導入チーム」をつくり、フィードバックを集める

段階的な導入の考え方は、他のDX施策にも共通します。小さな成功体験を積み上げていく進め方については、『AIを使って施工事例紹介文を時短で書くコツ|工務店・リフォーム会社のための活用術』でも紹介しています。

「経営陣が数字を見にいかない」パターン

クラウド会計を導入しても、経営者がログインせず、結局「試算表は税理士から紙で送ってもらうだけ」という状態になってしまうこともあります。

経営者が数字を見続けるための工夫

  • 月次の経営会議で、クラウド会計の画面を共有しながら数字を確認する
  • 「現場別粗利率」「事業別売上」など、見るべき指標を3つ程度に絞る
  • スマホアプリでいつでも売上・利益をチェックする習慣をつくる

クラウド会計は、単なる経理ツールではなく「経営のダッシュボード」として活用するイメージを持つと、導入の意味がより明確になります。

数字を使った経営の見直しという点では、『HPからの問い合わせが増えない工務店が見落としがちな3つのポイント』の中で触れられている「問い合わせ単価」「成約率」などの考え方も参考になります。


補助金・支援制度の活用も検討しよう

クラウド会計を含む業務改善ツールの導入は、補助金や支援制度の対象となる場合があります。特に、ITツール導入を支援する制度や、小規模事業者向けの補助金はチェックしておきたいところです。

例えば、小規模事業者持続化補助金は、ホームページやチラシなどの販路開拓だけでなく、場合によっては業務効率化ツールの導入にも活用できることがあります。詳しくは『小規模事業者持続化補助金でHPをリニューアルする手順|採択率を高めるコツと注意点』で、申請の流れや採択のポイントを確認しておきましょう。

また、省エネや高性能住宅関連の補助金を活用して事業規模が大きくなっている工務店では、売上・原価の管理が一層重要になります。『省エネ住宅の補助金を活用する流れ|事業者登録から完了報告まで徹底解説』もあわせて読むことで、補助金と会計管理をセットで考えやすくなります。


まとめ:クラウド会計は「経理の効率化」だけでなく「経営の見える化」のツール

クラウド会計は、紙伝票やExcelを置き換えるだけのツールではなく、工務店の経営とバックオフィスの両方をアップデートするための仕組みです。

  • 現場別・事業別の数字をタイムリーに把握できる
  • 経理担当者の入力負担を減らし、チェック業務に時間を割ける
  • 税理士との連携がオンラインで完結しやすくなる
  • 補助金や投資判断など、攻めの経営判断がしやすくなる

いきなり完璧なシステムを目指す必要はありません。まずは「銀行連携」「経費精算」など、負担が大きい部分から一つずつクラウド化していくことが、無理なく続けるコツです。

クラウド会計の導入は、経営者一人だけで抱え込むのではなく、経理担当・現場・税理士と一緒に進めるプロジェクトと考えましょう。少しずつでも前に進めていけば、1年後には「もう紙には戻れない」と感じるはずです。

この記事を書いた人

くらし建築百科 編集部は、工務店・リフォーム会社・建築会社の「現場」と「経営」の両方に寄り添う情報発信チームです。住宅業界のマーケティング支援やDX導入支援に携わってきたメンバーが、集客・採用・補助金・業務効率化など、明日から使える実務ノウハウを分かりやすくお届けします。

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