採用SNSを始めると、最初にぶつかるのが「顔を出すべきか」という判断です。現場の雰囲気を伝えるには、スタッフの表情や人柄が強い武器になります。一方で、顔が出た瞬間に個人が特定され、変なDMが来る、近所で声をかけられる、取引先や施主からの意見が直接本人に届くなど、現場が疲弊するパターンも起きます。
さらに工務店は地域密着で、現場住所・車両・社名入り制服などから特定されやすい業態です。採用のために露出を増やした結果、「本人の安全・プライバシー・現場トラブル」まで巻き込むと、長期的には採用広報そのものが止まります。大事なのは「顔出しする/しない」の二択ではなく、段階設計と運用ルールで守りながら続けることです。
顔出しを前提にすると、撮影・投稿が属人化し、現場の空気で押し切ってしまうことがあります。逆に慎重になりすぎると、何も出せずSNSが空回りします。判断の曖昧さを残すと、投稿のたびに揉めて止まります。

採用で安心感を出したいけど、顔出しをお願いすると嫌がられそうです。現場の雰囲気は伝えたいです。



顔出ししないと採用できないですよね?結局、みんな出す流れにしないと回らない気がします。
この記事では「顔出しレベルの決め方」「同意の取り方」「撮影・投稿フロー」を整理し、安心感を出しながらスタッフを守る運用ルールのゴールを作ります
工務店の採用SNSで「顔」が効く理由と、効かない場面


採用SNSで顔が効くのは、求職者が「一緒に働く人」を最も不安に感じるからです。求人票の条件が同じでも、現場の空気や人間関係が見えないと応募の決断ができません。特に工務店は現場中心で、入社後のギャップが起きやすい業種です。顔や声がある投稿は、安心感の材料になり、応募前の心理ハードルを下げます。
求職者が見ているのは「人柄」と「現場の温度感」です
求職者がSNSで確認しているのは、うまい施工写真よりも「現場の温度感」です。朝礼の雰囲気、段取りの丁寧さ、先輩の声かけ、休憩中の距離感など、言葉にしにくい情報が採用の決め手になります。顔出しが有効なのは、表情から温度感が伝わりやすいからです。
顔出しが逆効果になるのは「本人の負担」と「特定リスク」が増えるときです
逆効果になるのは、本人の負担が増えて継続できなくなるケースです。例えば、職人さんが撮影のたびに気を遣い、作業に集中できない状態が続くと、投稿が現場の邪魔になります。また「個人特定」は、顔だけでなく制服、社用車、現場の看板、背景の地名で起きます。個人特定とは、投稿情報の組み合わせで特定の個人が誰か分かってしまう状態のことです。
工務店の実務シーンでは「現場監督は顔出ししてもよいが、職人は避けたい」「営業は出せるが、家族が心配」というように職種・ライフスタイルで許容度が違います。ここを一律にすると不満が溜まり、採用広報が止まります。改善のコツは、顔出しを“義務”にしないで、出す人が損をしない運用を作ることです。運用イメージとしては、会社として出す範囲を先に決め、本人が選べる余地を残します。
顔出しは採用の武器になりますが、効果より先に「現場が続けられる負担」と「特定される条件」を潰してから設計しましょう
判断は二択ではなく「顔出しレベル」を段階で決める
顔出しの判断は、投稿ごとに悩むと必ずブレます。そこでおすすめは、会社の採用SNSを「顔出しレベル」で設計して、投稿の判断を型に落とすことです。ここでいうレベルとは、どこまで個人が分かる情報を出すかの段階です。レベルを決めると、撮影担当や広報担当が迷わず運用でき、現場への確認も最小化できます。
| 顔出しレベル | できること | 注意点 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| Lv1:顔あり+実名 | 人柄・指名感が強く伝わる | 特定リスク最大、退職後対応が必須 | 広報担当・代表・採用責任者など継続露出できる人 |
| Lv2:顔あり+名前はイニシャル/役職 | 安心感を出しつつ個人情報を抑えられる | 制服・車両・背景で特定される可能性 | 営業・監督の紹介、会社の雰囲気投稿 |
| Lv3:顔なし(後ろ姿・横顔・マスク) | 現場の温度感は出せる | 「誰でもよい感」にならない工夫が必要 | 職人・協力会社も含めた現場投稿 |
| Lv4:手元・道具・図面・社内風景中心 | 特定リスクを抑えて継続しやすい | 人柄が伝わりにくいので文章設計が重要 | まずは安全運用で始めたい会社、家族配慮が強い場合 |
表を使うと、社内の合意形成が一気に進みます。例えば「採用の安心感を上げたいが、職人の顔出しは避けたい」なら、会社の基本はLv3〜Lv4にして、希望者のみLv2を選べる形にします。失敗しやすいポイントは、最初からLv1で統一してしまい、辞めたい人が出ても戻せなくなることです。
職種別に「出す理由」と「守る理由」を分けて整理します
判断軸は「採用で必要な情報」と「本人を守る必要」のバランスです。営業は人柄が武器になりやすい一方、職人は現場の技術が武器で、顔が必須ではありません。現場監督は段取り力やコミュニケーションが伝わる投稿が強いので、Lv2が合うことがあります。運用イメージとしては、職種ごとに推奨レベルを決め、例外は申請制にします。
「本人の意思」と「家族の安心」を同時に満たします
顔出しは本人がよくても、家族が不安に感じることがあります。ここを軽視すると、後から取り下げ依頼が出て揉めます。改善のコツは、顔出しの同意を取る前に、会社として守るルール(DM対応、削除対応、退職時の扱い)を提示することです。専門用語の「同意取得」は、本人が理解した上で許可する手続きのことです。
【判断テンプレ】この投稿はLv1〜Lv4どれか?/目的:安心感・仕事理解・社風のどれを伝える?/登場人物:社員・協力会社・施主は映らないか?/特定要素:社名・車両・地名・現場住所が入っていないか?/掲載期間:いつまで出すか?(退職・異動時の削除ルール含む)
このテンプレを投稿前に1分で回すだけで、判断が属人化しません。現場は「今日の投稿どうする?」の相談が減り、広報担当は確認点が固定されます。
顔出しは「段階設計」が肝です。会社の基本レベルを先に決め、例外だけ申請制にすると揉めずに継続できます
撮影・投稿・保管までを「現場が回るフロー」に落とす


運用が止まる一番の原因は、撮影と投稿がその場のノリになり、後から問題が出ることです。工務店の現場は日々動き、撮り直しが難しいので、最初からフローを決めておくと楽になります。ここでいうフローとは、撮影前→撮影→投稿前→投稿後の手順を固定することです。
撮影前に「映してよい範囲」を現場で合意します
撮影前は、現場監督が5分で合意を取る形が現実的です。失敗しやすいのは、撮影者だけが判断して、背景に施主の私物や図面、表札が入ってしまうケースです。改善のコツは「映してよい範囲」を先に決め、撮影者が迷わない状態にすることです。
【撮影前ヒアリング項目テンプレ】撮影目的(採用/会社紹介/仕事理解)/撮影エリア(屋内・屋外・搬入動線)/映り込み注意(表札・住所・図面・施主の私物・近隣情報)/登場人物(社員のみ/協力会社は可否確認)/顔出しレベル(Lv1〜Lv4)/撮影NGが出た場合の代替案(手元・道具・後ろ姿)
「本文+箇条書き+補足解説」で投稿品質を安定させます
採用SNSは、写真だけだと誤解が生まれやすいです。文章で「何を見せたいか」を固定すると、顔出しを抑えても安心感が出ます。ここでは、投稿文を型にします。まず本文で状況を説明し、箇条書きで要点を整理し、最後に補足解説で現場の価値観を伝えます。
- 本文:今日は上棟前の段取り確認です。安全と近隣配慮を優先して、作業前に全員で手順を揃えます。
- 箇条書き:確認したこと(安全動線/搬入順/近隣挨拶/工具配置)を短く並べます。
- 補足解説:段取りの良さは、仕上がりとお客様対応に直結する、という価値観を一文で添えます。
補足解説を入れると「この会社は何を大事にしているか」が伝わります。顔が映らなくても、安心感は作れます。失敗しやすいポイントは、箇条書きが長くなり、投稿が説明書になることです。改善のコツは、箇条書きは4つ程度に絞り、補足解説で温度感を足すことです。
投稿前チェックと投稿後対応を決めて、現場を守ります
投稿前チェックがないと、忙しい日に限って事故が起きます。投稿後はコメントやDMが来たときの窓口が曖昧だと、本人に負担が集中します。運用イメージは「投稿前は広報がチェック」「投稿後の連絡は会社窓口に一本化」です。
【投稿前チェックテンプレ】顔出しレベル一致/名札・車両番号・地名が写っていない/図面・工程表・見積書が写っていない/施主・近隣が特定されない/協力会社ロゴの扱い確認/投稿文に個人連絡先を書かない/問い合わせ導線は会社窓口に統一
チェックリスト用途は、誰でも使える形がよいので、社内掲示用にチェックリスト形式も用意します。
- 投稿する前に、写真の背景を拡大して確認する
- コメント・DMは本人ではなく会社アカウントで対応する
- 削除依頼が来たら、即日一次返信して社内判断に回す
同意の取り方を間違えると、退職後に必ず揉めます
顔出し運用で一番揉めやすいのは、退職・異動・家庭状況の変化が起きたときです。「当時はOKだった」が通用しなくなります。ここで必要なのが同意の設計です。同意とは、掲載範囲・期間・削除条件を本人が理解して許可することです。口頭だけだと、後から認識が割れます。
同意は「お願い」ではなく「会社が守る約束」とセットにします
失敗しやすいのは「採用のために協力して」とお願いして、断りにくい空気を作ることです。これをやると、後から撤回が出たときに感情の問題になります。改善のコツは、会社が守るルールを先に提示し、選択肢として提示することです。例えば、顔出しは任意、レベルは選べる、削除はいつでも申請できる、窓口は会社が持つ、という形にします。
掲載期間と削除ルールを先に決めると、現場の不安が消えます
運用イメージとしては「投稿は原則1年で見直し」「退職時は一定期間で削除」「本人申請があれば即非公開にする」を会社ルールにします。SNSは拡散やスクリーンショットがあるため、完全削除は保証できません。この前提を同意書に入れておくと、過度な期待がなくなります。
【同意取得テンプレ(要点)】掲載媒体(Instagram/TikTok/YouTube等)/掲載内容(写真・動画・音声・コメント)/顔出しレベル(Lv1〜Lv4)/掲載期間(例:1年ごと見直し)/削除条件(本人申請・退職・家庭事情)/会社窓口(本人への直接連絡を避ける)/完全削除は保証できない前提(拡散・スクリーンショット)
この要点をベースに、就業規則や社内ルールに落とすと、担当者が変わっても運用が崩れません。現場監督が毎回説明しなくて済みます。
スタッフを守るためのNG例と、トラブル初動の型


採用SNSのトラブルは、本人が傷つく形で起きやすいです。工務店は現場が生活圏に近いので、距離が近い分だけリスクも上がります。ここでは、よくあるNG例と、起きてしまったときの初動を型にします。初動とは、最初の返信と社内共有を迅速に行い、被害を広げない対応のことです。
よくあるNGは「情報の映り込み」と「位置が分かる手がかり」です
失敗しやすいポイントは、顔を隠したのに特定されるケースです。背景に現場の地名、分譲地の看板、車両のナンバー、近隣の特徴的な建物が入ると、地域の人には分かります。室内では、図面、工程表、見積書、施主名が入った資料が写り込みやすいです。改善のコツは、撮影場所を固定し「SNS用の撮影スポット」を作ることです。
コメント・DM対応は「本人に触らせない」が鉄則です
本人が直接対応すると、言い返して炎上するか、精神的に疲れて辞めます。運用イメージは、会社窓口で一次返信し、必要なら非公開・削除・ブロックを判断します。特に「個人への執拗な連絡」「誹謗中傷」「無断転載は禁止の転載」は、早期に記録して対応します。記録とは、スクリーンショットや日時のメモを残すことです。
現場の安心感は「顔」だけでなく「守りの姿勢」でも伝わります
守りの姿勢を示すと、社内の協力が得られます。例えば、投稿文に個人への直接連絡を促さず、問い合わせは会社窓口に統一するだけでも、スタッフの不安は減ります。顔出しを強くしなくても、現場の丁寧さやチーム感を文章で補うと、採用の安心感は作れます。
【トラブル一次対応テンプレ】お問い合わせありがとうございます。個人への直接連絡はお控えください。確認のうえ、必要に応じて投稿内容の見直し・非公開対応を行います。連絡は当アカウント(会社窓口)までお願いいたします。
この一文を固定しておくと、担当者が慌てずに返せます。現場に「会社が守ってくれる」という安心が残ります。
まとめ|「安心感」と「安全」を両立させるための結論
工務店の採用SNSで顔出しは有効ですが、必須ではありません。判断の軸は、求職者に必要な安心感を出しつつ、スタッフの安全とプライバシーを守れているかです。二択にせず、Lv1〜Lv4の顔出しレベルで設計し、職種ごとに推奨レベルを決めると揉めずに続きます。
明日から試せる一歩は、投稿前に「判断テンプレ」と「投稿前チェックテンプレ」を1分で回すことです。これだけで、現場の負担と事故が減ります。社内共有・定着のコツは、同意取得の要点(媒体・期間・削除条件・窓口)を明文化し、担当者が変わっても運用が崩れない状態にすることです。
結論は「顔出しは段階設計+同意+フロー」で安全に運用できます。安心感を出しながら、スタッフを守る仕組みを先に作りましょう









