
振替伝票が多すぎて、月末にまとめて入力になり、結局締めが遅れています。現場別の粗利も見えません。



クラウド会計なら自動で全部きれいになると思っていましたが、建設業でも放っておけば整いますか。
この記事では「振替伝票が滞らない入力設計」と「部門管理で粗利を崩さない運用」を軸に、freee・弥生会計・マネーフォワードを建設業実務へ落とし込みます
まず押さえる建設業の会計要件:振替伝票と部門管理が回るか


振替伝票が多い会社ほど「入力の粒度」を決めないと詰まります
振替伝票は、現金や預金の増減が直接は出ない取引を仕訳で記録する伝票です。建設業では、外注費の未払計上、材料の月またぎ、前受金・前払金、相殺、立替精算などで振替伝票が増えます。ここで入力の粒度を決めずに「全部を細かく」入力しようとすると、月末にまとめ入力になり、締めが遅れます。
実務シーンで多いのは、現場監督が領収書をまとめて月末提出し、経理が請求書と突合しながら未払を起こし、税理士に回す流れです。この時点で、案件別の粗利は翌月以降にズレます。失敗しやすいポイントは、未払計上のルールが担当者ごとに違い、同じ外注費が「未払」「支払」「立替」のどれで入るかが揺れることです。
改善のコツは、振替伝票を「月次で必要なもの」と「年度末でまとめて良いもの」に分けることです。判断軸は、粗利を守るために工事原価へ早めに乗せたいかどうかです。社内運用は、外注費・材料費は月次で未払計上し、少額の立替や消耗品は月次の締め日にまとめる、と決めてしまいましょう。
振替伝票の入力ルール(社内共有テンプレ)
1. 外注費・材料費は「検収月」で未払計上する
2. 立替経費は「立替→精算」を必ずセットで処理する
3. 前受金は「入金時に前受、引渡月に売上へ振替」する
4. 相殺は「相殺専用の勘定科目」を作り、摘要に相手先と工事名を入れる
部門管理が機能しない原因は「部門の切り方」が業務線とズレることです
部門管理は、拠点や事業単位で損益を分けて集計する機能です。建設業では「支店別」「工事部別」「営業所別」「新築とリフォーム別」などの切り方が多い一方、現場は「工事別」で動きます。部門と工事の軸が混ざると、入力が二重になり、結局だれも使わなくなります。
失敗しやすいのは、部門を細かく作りすぎて選択ミスが頻発することです。改善の判断軸は、経営会議で使う切り口に絞ることです。たとえば、支店別の採算を見たいなら部門は支店に固定し、工事別の粗利は別帳票(工事台帳)で回す、という分離が効きます。社内で回すイメージとして、入力担当は「工事名」だけを確実に入れ、部門は初期設定で自動補完できる設計に寄せましょう。
工事別原価を見たいなら「工事台帳」と「会計」をどう繋ぐか決めましょう
工事別原価は、案件ごとに材料費・外注費・労務費などを集計し粗利を把握する管理方法です。会計ソフト単体で完結させるか、工事台帳を別で持ち連携するかで、選ぶソフトと運用が変わります。現場監督がスマホで経費登録し、経理が月次で原価配賦をする形にすると、会計ソフトの入力負担を抑えつつ粗利を守れます。
建設業のソフト選定は「振替伝票の入力設計」と「部門は経営で使う軸に絞る」を先に決めてから比較しましょう
3社比較の前提:freee・弥生会計・マネーフォワードの思想の違い
freeeは「業務フロー起点」で自動化を積み上げます
freeeは、請求・入金・支払・経費精算などの業務フローから会計を自動生成する設計が強みです。建設業で効く場面は、請求書発行から入金消込までを標準化し、経理の手戻りを減らすときです。失敗しやすいのは、現場の立替や相殺が多い会社で、フローの例外が増えすぎることです。改善のコツは、例外を「振替伝票で処理する領域」と割り切り、現場は経費精算、経理は月次仕訳、という役割分担にすることです。
弥生会計は「仕訳中心」で安定運用しやすい設計です
弥生会計は、仕訳入力を中心に堅牢に回しやすい設計です。建設業で効く場面は、振替伝票が多く、月次の未払計上や前受振替を手堅く運用したいときです。失敗しやすいのは、経理担当が少なく、入力が属人化してブラックボックスになることです。改善のコツは、摘要ルールと補助科目の運用を固定し、だれが入力しても同じ仕訳になるようにテンプレ化することです。
摘要ルールの統一テンプレ(コピペして社内規程に入れる)
摘要は「工事名/取引先/内容/検収月」をこの順で入れる
例:○○邸リフォーム/△△設備/給排水工事 外注/2026年1月検収
マネーフォワードは「入力と連携のバランス型」で拡張しやすい設計です
マネーフォワードは、仕訳入力の自由度を保ちつつ、銀行・カード・請求など外部連携で効率化しやすい設計です。建設業で効く場面は、支店や事業が増え、部門管理や権限を整えながら、現場の入力も取り込みたいときです。失敗しやすいのは、連携設定を作っただけで運用が決まらず、結局手入力が残ることです。改善のコツは、月次の締め日から逆算して「だれが何をいつまでに入力するか」を決め、連携はその補助として使うことです。
3社の違いは、freeeはフロー起点、弥生は仕訳起点、マネーフォワードは連携と入力の両立です。自社の体制に合う思想を選びましょう
機能比較表:振替伝票・部門管理・工事別の見え方で比べる


ここでは、建設業で判断が分かれやすい項目を同じ土俵で整理します。表は「できる/できない」ではなく、「標準で回しやすいか」「追加設計が必要か」を見るために使います。たとえば部門管理があっても、現場入力の導線が弱いと、部門が空欄になり集計が崩れます。運用まで含めて比較しましょう。
| 比較項目 | freee | 弥生会計 | マネーフォワード |
|---|---|---|---|
| 振替伝票運用 | フロー外の例外は設計が必要 | 仕訳・振替中心で回しやすい | 仕訳中心+連携で補助しやすい |
| 部門管理 | 設計次第で運用可能、入力導線の作り込みが要 | 集計は可能だが運用ルールの整備が重要 | 部門・権限の運用設計と相性が良い |
| 工事別の原価把握 | 工事台帳の持ち方を先に決めると回る | 工事別は別管理を併用すると安定 | 連携・部門設計と組み合わせて回しやすい |
| 現場のスマホ入力 | 経費精算導線を作ると強い | 現場入力は別ツール併用が現実的 | 現場入力と経理締めの分業が作りやすい |
| 権限・チェック | 承認フロー設計で効く | 運用は担当者スキルに依存しやすい | 権限設計とレビュー体制が組みやすい |
表の読み方:自社の「詰まりポイント」を先に特定します
詰まりポイントは会社ごとに違います。月次が遅れる会社は振替伝票が原因のことが多く、粗利がブレる会社は工事別原価の回収が原因のことが多いです。判断軸は、どこを最短で改善したいかです。社内運用のイメージとして、経理が詰まるなら仕訳起点で締めを早め、現場が詰まるならフロー起点で入力を軽くする方向が合います。
部門管理は「誰が部門を入れるか」を決めないと崩れます
部門管理を導入しても、部門コードが空欄の仕訳が増えると集計が崩れます。失敗しやすいのは、現場監督や営業に部門選択を任せ、選択肢が多すぎて誤入力が起きることです。改善のコツは、部門は経理が締めで付ける、または取引先や工事種別から自動補完する設計に寄せることです。部門は経営に必要な粒度に絞り、現場は工事名と取引先を正確に入れる運用にしましょう。
建設業での落とし込み:振替伝票を減らす入力設計と月次の締め方
本文+箇条書き+補足解説で整理:月次が遅れる原因と手当て
月次が遅れる会社は、証憑が集まらない、未払が起こせない、相殺や立替が止まる、のどれかで詰まります。ここをソフトの機能で解決しようとしても、入力設計が曖昧だと改善しません。まずは「締め日に必要な最小セット」を定義し、そこだけ必ず揃える運用にしましょう。
- 締め日に必要な最小セットは「請求書発行一覧」「入金予定と実績」「外注・材料の未払一覧」「立替精算の残高」です
- 振替伝票の代表は「未払計上」「前受の振替」「相殺」「立替精算」です
- 現場は領収書提出より先に「工事名・取引先・金額」だけを共有します
補足解説です。未払計上は、検収済みだが支払がまだの費用を未払金として計上する処理です。これを入れないと、当月の粗利が良く見えてしまい、翌月に費用が固まって粗利が急落します。前受金は、引渡前に受け取ったお金を一旦負債として管理する方法です。これを売上に入れるタイミングがズレると、月次売上がぶれます。相殺は、売掛と買掛を差し引いて決済する方法で、仕訳が二重になりやすいので摘要ルールが必要です。
月次締めのチェックリスト(経理用)
□ 請求書発行一覧と入金消込が一致している
□ 未払計上(外注・材料)の根拠資料が揃っている
□ 立替精算の未処理が一覧化されている
□ 前受金の残高と引渡予定が一致している
□ 相殺取引の摘要に工事名と相手先が入っている
運用イメージ:現場と経理を分業し、締めの前倒しを作ります
社内で回すためには、現場が全部入力する形にしないことが重要です。現場は、協力会社の請求の到着見込み、検収日、工事名を先に共有します。経理は、締め日までに未払計上を起こし、翌月の支払で消し込みます。この分業にすると、振替伝票は増えても月次は早まります。失敗しやすいのは、現場が情報共有を後回しにし、経理が請求書待ちになることです。改善のコツは、締め日を月末ではなく「月末の3営業日前」に社内締めとして固定することです。
振替伝票を減らす近道は、現場が先に「工事名・取引先・検収日・金額」を共有し、経理が未払計上を前倒しで回す分業設計です
部門管理を使いこなす:支店別・事業別・工事別を混ぜないルール


部門は「経営会議で使う単位」に絞り、現場は工事軸を守ります
部門管理を導入すると、損益の責任範囲が明確になり、改善アクションが取りやすくなります。ただし部門を増やしすぎると入力が崩れます。実務シーンとして、支店別に数字を見たいのに、工事別まで部門で切ろうとして選択肢が増え、入力ミスが増えるケースがあります。失敗しやすいポイントは、部門と工事名が一致していないのに、部門で工事別集計をしようとすることです。
改善の判断軸は、部門は固定、工事は可変、と捉えることです。部門は組織が変わらない限り固定です。一方、工事は毎月増減します。だから、部門は支店や事業のような固定軸に絞り、工事別は工事台帳やタグなど別の軸で追いましょう。社内運用は、部門コードは経理がマスタ管理し、取引先や担当支店から自動で付く仕組みに寄せると安定します。
部門設計の決め方テンプレ(経営者向け)
1. 経営会議で毎月見る切り口を3つまで書き出す
2. そのうち「毎月変わらない固定軸」だけを部門にする
3. 工事別は部門に入れず、工事台帳で粗利を追う
4. 部門の入力担当を1人に固定し、例外はメモで残す
部門別の粗利を崩さないための「配賦」ルールを作ります
配賦は、共通費を一定の基準で各部門へ割り振る方法です。建設業では、車両費、家賃、人件費などが共通費になりやすく、配賦がないと部門別の採算が歪みます。失敗しやすいポイントは、配賦基準が毎月変わり、数字の比較ができなくなることです。改善のコツは、配賦基準は年に1回だけ見直し、月次は同じ基準で回すことです。社内運用は、配賦は締めの最後に経理がまとめて振替伝票で入れましょう。
導入・切替で失敗しない:稟議、税理士連携、初月の運用ルール
稟議は「機能」ではなく「回る運用」で通します
会計ソフトの稟議が通らない理由は、料金ではなく、導入後にだれが何をするかが曖昧だからです。実務シーンとして、経理が少人数で、現場にも入力を頼みたいが協力が得られない、という状況があります。失敗しやすいポイントは、便利そうだからで選び、初月の締めで詰まって旧運用に戻ることです。改善のコツは、初月だけは「入力項目を減らす」「締めを2回する(仮締め→本締め)」と決め、移行期間の負荷を織り込むことです。
会計ソフト導入の稟議テンプレ(そのまま使えます)
目的:月次締めを当月+5営業日以内にし、部門別の粗利を毎月確認する
現状課題:振替伝票が月末集中し、未払計上が遅れて粗利がぶれる
導入範囲:請求・入金・未払・立替精算の最小セットから開始する
体制:現場は工事名・取引先・金額を締め3営業日前までに共有、経理が仕訳と振替を担当する
評価指標:締め日、未処理立替件数、部門コード空欄件数を月次で確認する
税理士連携は「丸投げ」ではなく「役割分担」を明文化します
税理士連携がうまくいかないのは、入力と判断の境界が曖昧だからです。たとえば未払計上の判断、前受の振替タイミング、相殺の処理などは会社の運用が絡みます。失敗しやすいのは、税理士に全部任せた結果、社内に数字が残らず、現場改善に使えないことです。改善のコツは、社内は月次速報を作り、税理士は決算調整と税務判断を担う、と役割を固定することです。社内運用は、月次の締め後に「確認してほしい論点」を一覧で渡す形が回ります。
税理士への依頼メッセージテンプレ(メール・チャット用)
今月の月次速報を締めました。以下の論点だけ確認をお願いします。
1. 外注費の未払計上:○○現場(検収日と請求未着の扱い)
2. 前受金の売上振替:○○現場(引渡日と計上月)
3. 相殺取引:△△社(相殺の仕訳パターンの妥当性)
社内では部門別粗利を翌営業日に共有するため、上記の判断基準も合わせてご教示ください。
導入の成否は「初月の入力を絞る」「仮締め→本締めの二段階」「税理士と判断境界を明文化する」で決まります
まとめ:建設業で選ぶべきはソフト名ではなく、振替伝票と部門管理の運用設計


判断軸の再確認:何を守りたいかを一文で言える状態にします
freee・弥生会計・マネーフォワードは、どれも会計はできます。違いは、建設業の実務で「入力が滞らない形」を作りやすいかです。振替伝票が多い会社は、仕訳起点で締めを守る設計が必要です。部門管理を活かしたい会社は、部門を固定軸に絞り、配賦と入力担当を決める必要があります。工事別原価を守りたい会社は、工事台帳と会計の役割を分け、粗利が翌月にズレない締め方が必要です。
明日から試せる一歩:まずは締め日に必要な最小セットを決めましょう
明日からできる一歩は、ソフトの乗り換えではなく、月次締めに必要な最小セットを紙1枚にまとめることです。請求、入金、未払、立替、前受の5点に絞り、締め3営業日前に情報が揃う流れを作りましょう。次に、部門は経営会議で使う軸だけに絞り、空欄が出ない入力導線を作りましょう。これだけで、どのソフトでも数字が意思決定に使える状態へ近づきます。
社内共有と定着のコツは、ルールを増やすことではなく、テンプレで迷いを減らすことです。この記事のテンプレをそのまま社内規程に入れ、初月は仮締めを置き、詰まりを見える化して改善しましょう。
判断軸は「締めを守る入力設計」と「部門は固定軸に絞る」です。最小セットの月次運用を決め、テンプレで定着させましょう









