工務店サイトの問い合わせは、日中は電話、夜はフォームという二重構造になりやすいです。特に夜間や休業日は、資料請求や「だいたいの費用感だけ知りたい」という入口質問が集中しますが、返信が翌営業日になると熱量が下がり、他社に流れやすくなります。さらに、問い合わせ対応が特定の担当者に寄ると、返答品質が揺れ、現場確認の段取りも止まります。
ここでAIチャットボットを入れると、一次対応の速度は上がります。ただし「何を答えてよいかの線引き」が曖昧なまま入れると、見積や補助金の誤案内が発生し、信頼を落とします。夜間対応は便利な反面、回答の責任範囲と、有人への引き継ぎ条件を決めない限り、現場と事務の負担が増えます。

夜に資料請求が来ても翌日対応になるので、取りこぼしている気がします。電話に出られない時間帯の問い合わせも増えています。



AIを入れれば勝手に受注が増えると思っていましたが、補助金や費用の話を間違えたら逆にクレームになりませんか。
この記事では「AIに任せる範囲」「根拠ある回答の作り方」「有人へ繋ぐ条件」「運用が崩れないルール」を一つの設計図として整理します
工務店の問い合わせを24時間化する全体設計|AIに任せる範囲を先に決める


AIチャットボットは「自動で会話する仕組み」です。ここで言うAIチャットボットとは、サイト上の質問に対して、あらかじめ用意した情報や社内の資料を参照しながら文章で回答する対話型ツールのことです。導入の成否は、ツール選びより先に「AIに任せる業務範囲」を決められるかで決まります。工務店の問い合わせは、費用・工期・施工可否・資料請求・補助金・来店予約など、判断が混ざっています。全部をAIに任せようとすると、現場確認が必要な内容まで断定してしまい、誤案内の温床になります。
実務でおすすめの切り分けは、一次対応を「入口の整理」に限定することです。たとえば夜間に「内窓の費用はいくらですか」と聞かれた場合、AIは相場レンジと費用が上下する条件を説明し、次に必要な情報をヒアリングして、フォーム送信か翌日の電話予約に繋ぎます。現場が躓きやすいのは、相場レンジの出し方が担当者ごとに違い、見込み客の期待値が勝手に膨らむことです。AIに任せるなら、回答テンプレを統一し、必ず「条件次第で変動する」前提を固定します。
AIに任せるべき問い合わせと、任せてはいけない問い合わせ
AIに任せるべきなのは、定型化できる入口対応です。任せてはいけないのは、現場調査や法規判断、補助金の確定可否など、断定が危険な領域です。現場の運用イメージとしては、AIが夜間に情報を集め、翌営業日に担当者が優先順位をつけて折り返す形にすると回ります。
- 任せる:資料請求、施工エリア確認、来店予約の候補提示、よくある質問(保証、対応メニュー、標準工期の目安)
- 任せる:概算費用の相場レンジ提示と、変動条件の説明
- 任せない:現場写真だけでの断定、補助金の採択保証、構造耐力・法規の可否判断、契約条件の確約
夜間に強い導線は「即回答」より「次の一手」を提示すること
夜間対応で成果が出るのは、回答そのものより「次に何をすれば前に進むか」を具体化できたときです。たとえば「屋根の塗装は可能ですか」という質問に、可能かどうかだけ答えるのではなく、築年数・前回の塗装時期・雨漏り有無・屋根材の種類を聞き、写真アップロードの案内まで出します。これにより、翌営業日の現場担当が判断する材料が揃い、折り返しが短くなります。失敗しやすいのは、質問が増えすぎて離脱することなので、夜間は最大3問程度に絞り、残りはフォームで補完する流れにします。
【判断テンプレ:AIに任せるか】
この質問は「定型回答で誤差が出ない」か。
この質問は「現場確認がないと断定できない」か。
断定できない場合は「相場レンジ+条件提示+有人引き継ぎ」に切り替える。
AI導入の最初の勝ち筋は「一次対応の範囲を入口整理に限定し、断定が危険な領域は相場レンジと引き継ぎ条件で守ること」です。
方式選びで失敗しない|FAQ型・AI回答型・有人連携の違いを比較する
AIチャットボットには方式があります。FAQ型は、用意した質問と回答をそのまま返す方式です。AI回答型は、質問文の意図を読み取り、複数の情報から文章を生成して返す方式です。さらに有人連携は、AIが受付をして、必要時に担当者へ引き継ぐ設計です。方式を間違えると、回答が弱すぎて使われないか、逆に賢すぎて断定してしまうかの二択になります。工務店では、まずFAQ型で入口を固め、次にAI回答型を限定領域で追加し、最後に有人連携で漏れを塞ぐ順が安全です。
工務店に合う方式は「質問の種類」で決める
質問が「会社情報・対応エリア・施工の流れ」のように固定ならFAQ型が強いです。質問が「費用の目安・工期の目安」のように条件分岐があるなら、AI回答型が便利です。ただし費用は断定が危険なので、回答文をテンプレ化し、レンジ表示と注意書きを固定します。現場が詰まりやすいポイントは、AIの回答が担当者の説明と食い違うことです。運用では、回答の元ネタを社内で一つにし、更新担当も決めます。
比較表|できること/できないことを先に見える化する
| 方式 | できること | できないこと | 向いている問い合わせ |
|---|---|---|---|
| FAQ型 | 定型回答を確実に返す、誤案内が起きにくい | 言い回しが違う質問に弱い、深掘りが苦手 | 営業時間、対応エリア、資料請求、施工の流れ |
| AI回答型 | 意図を汲んで文章化、条件分岐の説明ができる | 根拠が曖昧だと断定しやすい、監修が必要 | 概算費用の目安、工期の目安、比較相談の入口 |
| 有人連携 | 難問を担当者へ繋げる、取りこぼしを減らす | 運用ルールがないと通知が埋もれる | 現場調査が必要、補助金の個別条件、クレーム系 |
実務の改善のコツは、方式を一つに決め切らず「混ぜる前提」で設計することです。夜間はFAQ型で入口を受け、条件分岐が必要な領域だけAI回答型に任せ、最後に有人連携で安全弁をつけます。判断軸は、誤案内のリスクと、問い合わせの頻度です。頻度が高いのに毎回有人対応している領域こそ、AIで標準化すると効果が出ます。
【導入方式の決め方テンプレ】
頻度が高い質問はFAQ型で固定する。
条件分岐がある質問はAI回答型にするが、回答文は「レンジ+条件+注意」で統一する。
断定が危険な質問は、AIは受付に徹し、有人連携へ切り替える。
回答の根拠を作る|RAG設計とFAQ整備で「それっぽい嘘」を防ぐ


AI回答型で最も怖いのは「それっぽい嘘」です。AIは文章を作るのが得意なので、根拠が不足していても流暢に答えてしまいます。ここで重要になるのがRAGです。RAGとは、社内の資料やFAQを検索して根拠を取り出し、その根拠に沿って回答文を作る方式のことです。RAGを前提にすると、回答の元ネタを管理でき、更新も社内で回せます。工務店の実務では、まず「サイト掲載情報」「資料請求で渡しているパンフ」「施工事例の共通説明」「保証規定」「標準工期の目安」を一次情報として整備するのが先です。
FAQを作る順番は「夜間に多い入口質問」からです
FAQ整備で失敗するのは、完璧を目指して作り込みすぎることです。夜間に多いのは、費用・工期・対応範囲・資料請求・予約です。まずこの入口だけ揃え、残りは順次追加します。改善のコツは、現場と事務の両方が使う表現に統一することです。たとえば「最短工期」という言葉は期待値を上げるので、「標準的な目安」と書き、前提条件を必ず添えます。運用イメージとしては、週1回の15分で「追加したい質問」と「修正したい回答」を決め、反映担当が更新します。
本文+箇条書き+補足解説|費用回答をレンジ化する作り方
費用の質問は最も多い一方、最も誤案内が起きやすい領域です。ここはAIに「断定させない型」を持たせるのがコツです。実務では、費用回答をレンジで提示し、上下する条件を箇条書きで示し、最後に次の行動を案内します。
- 費用は「標準的な相場レンジ」で提示し、最安値の強調はしない
- レンジが上下する条件を3点に絞って提示する
- 「確定には現地確認が必要」と必ず添える
- 次の一手として「写真送付」「現地調査予約」「資料請求」のいずれかに誘導する
補足解説です。条件を3点に絞る理由は、夜間のチャットでは情報量が多いほど離脱しやすいからです。たとえば内窓なら「窓サイズ」「ガラス仕様」「設置箇所の数」の3点で大半の説明ができます。ここをテンプレ化すると、担当者が回答してもAIが回答してもブレが減ります。
【費用回答テンプレ(コピペ用)】
お問い合わせ内容の概算目安です。条件で変動しますが、一般的には「〇〇円〜〇〇円」あたりが多いです。
費用が変わる主な条件は、①〇〇 ②〇〇 ③〇〇です。
正確な金額は現地状況で変わるため、写真共有または現地調査で確定します。よろしければ「写真を送る/現地調査を予約する/資料を請求する」からお選びください。
ツール導入の進め方|要件定義・設置・通知設計で「回る形」にする
導入は「設置して終わり」ではありません。工務店のDXで多い失敗は、現場と事務のどちらにも刺さらない形で導入して、結局使われなくなることです。要件定義では、KPIを一つに絞ります。たとえば「夜間の資料請求数を増やす」「折り返しまでの時間を短縮する」「電話の一次対応を減らす」のいずれかです。次に、チャットの設置場所と導線を決めます。トップページだけでは弱いので、施工メニューや事例ページにも設置し、質問の入口を増やします。
通知設計が肝です|埋もれない受け皿を先に作る
夜間の問い合わせが増えても、朝に埋もれたら意味がありません。ここで必要なのが通知設計です。通知設計とは、チャットで集まった情報を、担当者が確実に見て、優先順位をつけて処理できる形で届ける設計のことです。例えば、メール通知だけだと見落としやすいので、案件管理表やCRMに自動登録し、担当者にタスクとして割り当てます。CRMとは、顧客情報と商談履歴を一元管理する仕組みのことです。現場の運用イメージとしては、朝一番に「夜間問い合わせ一覧」を見て、資料請求は即送付、現調希望は日程調整、相場質問はテンプレ返信で一次対応します。
休業日・夜間のルールをチャットの文面に埋め込む
誤解が起きやすいのは、AIが返したから「今すぐ工事が動く」と期待されるケースです。ここはチャットの最初に、営業時間と折り返し目安を明示し、緊急時の連絡手段を案内します。改善のコツは、文章を丁寧にしすぎないことです。夜間は短い説明のほうが読まれます。社内で回すためには、テンプレを固定し、季節の繁忙期だけ折り返し目安を変える運用にします。
【導入前チェックリスト(要件定義)】
目的は1つに絞れているか(夜間資料請求増/折り返し短縮/電話削減)。
AIに任せる範囲と、有人に回す条件が決まっているか。
回答の元ネタ(FAQ、パンフ、保証規定)が揃っているか。
通知の受け皿(担当者、一覧、優先順位)が決まっているか。
【休業日・夜間の案内テンプレ(コピペ用)】
お問い合わせありがとうございます。現在は営業時間外のため、担当者からの折り返しは「次の営業日〇時以降」を目安にご連絡します。
お急ぎの場合は「〇〇(緊急窓口)」をご利用ください。概算や流れのご質問は、このまま続けて入力いただけます。
トラブルを防ぐ運用ルール|個人情報・引き継ぎ・ログ確認を標準化する


AIチャットボットは便利ですが、運用ルールがないと必ず揉めます。特に工務店では、住所や現場写真など個人情報が入りやすいです。個人情報とは、特定の個人を識別できる情報のことです。ここを安全に回すには、入力させる項目を絞り、保存先と閲覧権限を決め、削除ルールも明確にします。また、有人へ引き継ぐ条件が曖昧だと「AIが答えられないのに答え続ける」状態になります。実務では、一定回数で解決しない場合や、クレーム・安全・法規・補助金確定に関わる場合は、必ず有人へ切り替えます。
有人切り替え条件を固定する|現場確認が必要な瞬間を逃さない
切り替え条件は、現場の判断軸をそのままチャットに落とします。たとえば「現場写真の有無」「築年数不明」「構造に関わる質問」「補助金の申請可否の確定要求」「近隣トラブル」などです。失敗しやすいのは、AIが長文で説明してしまい、ユーザーが疲れて離脱することです。改善のコツは、切り替え条件に該当したら、説明を短くして「担当者に引き継ぐための確認」を2問だけして終えることです。運用イメージとしては、引き継ぎ案件は朝の優先枠で処理し、当日中に一次返信だけでも返します。
ログ確認で品質を上げる|現場が使う言葉に寄せる
ログとは、チャットのやり取りを記録した履歴のことです。ログを見ると、問い合わせの実態が見えます。よくあるのは、ユーザーが施工名を誤解している、補助金を一律に受けられると思っている、というズレです。ここを拾ってFAQを直すと、問い合わせ対応の品質が上がります。現場が躓きやすいポイントは、言葉のズレで追加説明が増えることなので、ログをもとに「言い換え」を整備し、専門用語には必ず一文の説明を添えます。
【運用ルールテンプレ(社内共有用)】
AIが答えるのは入口整理までとし、断定が必要な内容は有人へ切り替える。
個人情報は必要最小限のみ取得し、保存先・閲覧権限・削除期限を決める。
有人切り替え案件は「当日中に一次返信」を原則とする。
週1回、ログからFAQの修正点を1つだけ反映する。
まとめ|夜間の見込み客を逃さないために、AIは「入口整理」と「運用」で勝つ
工務店サイトの問い合わせを24時間化する判断軸は、AIに任せる範囲を入口整理に限定し、断定が危険な領域はテンプレと有人連携で守ることです。方式はFAQ型から固め、必要な領域だけAI回答型を足し、通知設計で朝に処理できる受け皿を作ると回ります。
明日から試せる一歩は、夜間に多い入口質問を10個だけ洗い出し、費用回答は「レンジ+条件+注意」で統一することです。社内共有・定着のためには、運用ルールをテンプレで固定し、週1回のログ確認でFAQを少しずつ更新しましょう。









