断熱窓の提案は、商品としては分かりやすい一方で、現場では「補助金の説明が人によって違う」「製品の性能確認が抜ける」「申請段取りが営業任せになる」など、属人化が起きやすい領域です。
さらに、工期が短い内窓設置は回転率が高い反面、見積・契約・発注・写真管理・申請書類までの一連が詰まると、バックオフィスと現場監督にしわ寄せがいきます。ここを整えると、短工期・高単価を安定して積み上げられます。

補助金の話をすると喜ばれるのに、最後は「結局いくら負担なのか分からない」で止まってしまいます。



補助金は施主が申請するのですよね。うちは書類が面倒なので対象外でいいですか。
補助金を「値引き」ではなく「判断材料」として提示し、短工期パッケージを社内で回せる状態にすることがゴールです
先進的窓リノベ事業を営業で使うための前提整理


先進的窓リノベ事業は、既存住宅の窓(ガラス)交換などの断熱改修を支援する制度で、窓の交換と同一契約内で同時に行うドアの交換も対象になります。制度の大枠を理解しておくと、営業トークと社内段取りがブレません。
まず重要なのは、補助金の申請は施主が自分で行うものではなく、施工業者が「窓リノベ事業者」として登録したうえで、交付申請等の手続きを行い、補助金を受けて施主に還元する流れだという点です。ここを最初に伝えると「書類が面倒だからやめる」という誤解を潰せます。
また、補助額は一律ではありません。窓の性能区分とサイズ、住宅の建て方などで変わります。ここで出てくる「熱貫流率(Uw)」は、窓から熱がどれだけ逃げやすいかを表す数値で、数値が小さいほど断熱性能が高い指標です。
営業が最初に握るべき3つの判断軸
提案の初動で、営業が最低限握る判断軸は3つです。現場に投げずに、ヒアリングで確定させます。
- 施主のゴール:寒さ対策、結露対策、防音、光熱費削減のどれが最優先か
- 工事の制約:在宅可否、家具移動の可否、マンション規約、工事可能時間
- 提案の勝ち筋:短工期で回転を取るのか、外窓交換まで踏み込むのか
失敗しやすいのは、ゴールが「何となく寒い」だけのまま見積に入ってしまうことです。寒さの原因が窓なのか、隙間風なのか、暖房計画なのかが曖昧だと、提案が刺さりません。
できること・できないことを先に線引きする
制度は便利ですが万能ではありません。営業段階で「できること・できないこと」を線引きしておくと、後工程のやり直しが減ります。例えば、対象になるのは登録された製品を用いた工事に限られるため、製品選定は必ず「補助対象製品の検索」等で確認し、独自判断で進めない運用が必要です。
| 改修メニュー | 向いている施主 | 短工期適性 | 失敗しやすいポイント |
|---|---|---|---|
| 内窓設置 | 寒さ・結露・防音を早く改善したい | 高い | 採寸・納まり確認不足で再製作、家具移動の段取り漏れ |
| 外窓交換 | 根本改善と見た目も変えたい | 中 | 工期と費用の説明不足で「思ったより大工事」になる |
| ガラス交換 | サッシは残してコストを抑えたい | 中 | 効果の期待値調整不足で満足度が下がる |
| ドア交換(同一契約内) | 玄関の冷気・すきま風も気になる | 中 | 窓工事と別契約にして対象外になるリスク |
【初回商談での説明テンプレ】
本補助金は、当社が登録事業者として申請手続きを行い、交付された補助金を工事代金から差し引く形で還元します。補助額は窓の性能とサイズで変わるため、現地採寸後に「補助金込みの実質負担額」をシミュレーションしてご提示します。
最初に「申請は事業者が行い、補助額は性能とサイズで変わる」をセットで伝えると、補助金トークが武器になります。
施主が即決しやすい「断熱窓シミュレーション」の作り方
断熱窓の営業で強いのは、補助金の制度説明ではなく「この家のこの窓を変えると、体感と実質負担がどう変わるか」を数字と見た目で示すことです。ここができると、相見積でも比較軸をこちらが握れます。
シミュレーションは難しく作りません。現場が回ることが最優先です。最低限そろえるのは「工事前後の体感変化の言語化」「補助金込みの実質負担額」「工期と生活影響」です。補助額の確認は、公式の対象要件・対象工事の整理に沿って、対象製品と性能証明の情報を前提に組み立てます。
提示は3枚で十分です
営業資料は分厚いほど伝わりません。商談で使うシミュレーションは3枚で十分です。
- 1枚目:対象窓リスト(部屋・窓番号・サイズ・現状の悩み)
- 2枚目:提案プランA/B(内窓中心/外窓含むなど)と工期
- 3枚目:費用内訳(工事費・製品・諸経費)と補助金見込み、実質負担
失敗しやすいのは、補助金額を先に強調してしまい、工事内容の価値が薄く見えることです。順番は「悩みの特定→対策→費用→補助金」です。
ハイブリッド構成で提案が刺さる形にする
ここでは「本文+箇条書き+補足解説」の型で、商談でそのまま話せる流れを作ります。
まず本文で、施主の悩みを一言で言語化します。次に箇条書きで、提案の中身を短く並べます。最後に補足解説で「なぜそれが効くか」を噛み砕いて説明します。
- リビングの掃き出し窓は内窓で冷気を止めます
- 寝室は結露対策として性能区分の高い窓を優先します
- 玄関まわりの冷えは同一契約内でドア断熱も検討します
補足解説として、「内窓は既存窓の内側にもう一枚窓を追加して空気層をつくり、冷気と結露を抑える工法です」と1文で言い換えて説明すると、納得感が上がります。
【採寸後のシミュレーション提示テンプレ】
現地採寸の結果をもとに、窓ごとのサイズと性能区分で補助金見込みを整理しました。工事内容は「体感改善が大きい窓から優先」する構成にしています。今日この場では、A案(短工期・内窓中心)とB案(外窓も含めて根本改善)の2案で、工期・実質負担・生活影響を比較して選べるようにします。
短工期・高単価案件を量産する提案パッケージの作り方


内窓設置などの短工期案件は、単発で追うと利益が残りにくいですが、パッケージ化すると粗利が安定します。ポイントは「標準仕様を決める」「追加提案をルール化する」「現場の手戻りを潰す」の3つです。
パッケージは3段階にする
提案の段階で3段階のパッケージを用意すると、施主は選びやすく、営業は迷いません。具体例として、次のように組みます。
- ライト:主要1〜2室のみ(リビング+寝室など)
- スタンダード:生活動線の部屋を一通り(LDK+寝室+子ども部屋)
- フル:全室+玄関まわり(同一契約内でドアも検討)
失敗しやすいのは、施主の要望を全部拾って「窓ごとに別仕様」になり、見積も工期も読めなくなることです。改善のコツは、標準仕様を決めて例外を減らすことです。
追加提案は「優先順位」を固定する
短工期で回すほど、追加提案のルールがないと営業が疲弊します。追加提案の優先順位を固定しましょう。
- 優先1:体感差が出る大開口(掃き出し、出窓)
- 優先2:結露が強い北面・寝室
- 優先3:在宅時間が長い部屋(在宅ワーク部屋など)
- 優先4:玄関まわり(窓と同一契約内で検討)
運用イメージとしては、初回商談で部屋単位のパッケージを提示し、採寸後に窓単位の最終仕様へ落とします。ここで「どの窓が対象か」「どの製品が対象か」を確認するフローを営業に組み込むと、申請側での混乱が減ります。
【パッケージ提案の見積表記テンプレ】
内窓パッケージ(スタンダード)一式:対象室(LDK・寝室・子ども部屋)/窓枚数:現地採寸後確定/工期:原則1日(養生・清掃含む)
補助金:性能区分・サイズ確定後に見込み額を提示し、交付後は工事代金から差し引く形で精算します。
短工期で量産するなら、パッケージを3段階にして「標準仕様と例外」を先に決めましょう。
補助金をトラブルなく通すための社内運用とチェックポイント
補助金絡みのトラブルは、制度そのものより「社内の役割分担が曖昧」なことが原因です。営業が善意で抱え込み、写真や書類が揃わず、申請が詰まります。先進的窓リノベ事業では、交付申請等の手続きや還元は施工業者側で行う前提のため、社内で申請フローを固定しておく必要があります。
役割分担を4役に分けて固定する
最低限、次の4役を固定すると回ります。小規模でも兼務で構いませんが、責任の所在だけ決めます。
- 営業:初回説明、同意取得、採寸依頼、契約条件の整合
- 現場監督:納まり確認、工事指示、写真要件の徹底
- 発注担当:対象製品の確認、性能証明の取得、納期管理
- 申請担当:書類収集、入力、還元(値引き精算)の管理
失敗しやすいのは、契約が「窓工事とドア工事で別契約」になってしまうことです。同一契約内で同時に行うドア交換が対象になる前提があるため、契約の切り方は営業段階で統一します。
チェックリストで抜けを潰す
ここはチェックリスト化して、案件ごとに丸を付けるだけにします。チェックリストは「契約前」「着工前」「完了後」で分けると運用しやすいです。
- 【契約前】施主へ「申請は事業者が行い還元する」説明を実施
- 【契約前】対象工事の範囲(窓・ガラス・ドア)を同一契約に統一
- 【着工前】対象製品の確認と性能証明の手配
- 【着工前】写真の撮影ルール(撮り忘れ防止の手順)を現場に共有
- 【完了後】書類一式の回収期限を設定し、申請担当へ引き渡し
改善のコツは、写真と書類を「現場の善意」に頼らないことです。現場監督の当日チェック項目に組み込んで、撮影タイミングを固定します。
【社内運用ルールテンプレ(コピペ用)】
本案件は補助金申請を伴うため、(1)契約は窓工事を中心に同一契約で統一する (2)対象製品は発注前に申請担当が確認する (3)現場写真は監督が当日チェックリストで回収する (4)完了後3営業日以内に申請担当へ書類一式を引き渡す。上記を守れない場合は、申請スケジュールが遅延する可能性がある。
補助金を追い風にする営業トークと反論処理


補助金トークの目的は、安売りではなく「意思決定の速度を上げること」です。施主が迷うのは、商品理解ではなく、家計と生活への影響が見えないときです。そこで、シミュレーションとセットで話す型を持ちましょう。
基本トークは「価値→費用→補助金→期限」の順です
話す順番を固定すると、担当によるブレが消えます。
- 価値:寒さ・結露・防音のうち、どれが一番改善するか
- 費用:工事費と工期、生活への影響
- 補助金:対象なら実質負担が下がること、申請は事業者側で行うこと
- 期限:予算・受付状況に左右されるため、検討期間の目安を共有
制度の受付状況は年度ごとに変動するため、断定は避けつつ、公式情報に基づく確認が必要です。住宅省エネキャンペーンでは交付申請の受付終了が告知されることもあるため、商談の検討期間は「社内の標準」を決めておきます。
よくある反論と返し方
現場で多い反論を、返し方までセットで用意します。言い回しはこのまま使えます。
- 「補助金って面倒そう」→「申請は当社が行い、必要書類だけご協力いただく形です」
- 「本当に暖かくなるの」→「まず体感差が出る窓から優先し、部屋単位で変化が分かる構成にします」
- 「相見積を取りたい」→「比較しやすいように、窓ごとの仕様と工期、実質負担で整理した資料をお渡しします」
- 「今は忙しい」→「工期は原則1日で、養生と清掃まで当日完結の段取りにします」
失敗しやすいのは、相見積の話になった瞬間に値引き交渉に引き込まれることです。判断軸を「実質負担」だけにせず、「工期」「生活影響」「施工品質の担保(採寸・納まり・写真管理)」まで含めて比較表を出すと、こちらの土俵に戻せます。
【クロージングの一言テンプレ】
今日の時点では、A案(短工期で主要窓を優先)とB案(外窓も含めて根本改善)のどちらがご家庭に合うかを決める段階です。次回までに、窓の最終採寸と対象製品の確定を行い、補助金込みの実質負担を確定させます。ご都合の良い工事希望日を2候補いただければ、段取りまで含めて具体化します。
まとめ|補助金を追い風に断熱窓を“仕組みで”売り切る
先進的窓リノベ事業を営業に活かす判断軸は、補助金そのものではなく「申請は事業者側で行う前提を最初に説明する」「性能とサイズで補助額が変わるため採寸後に実質負担を提示する」「短工期で回すためにパッケージと社内運用を固定する」の3点です。
明日から試せる一歩は、採寸後に出す資料を「窓リスト・2案比較・実質負担」の3枚に絞り、初回商談の説明テンプレを全員で統一することです。これだけで、見積のやり直しと説明のブレが減ります。
社内共有と定着のコツは、営業・現場・申請の役割分担を4役で固定し、チェックリストと回収期限を運用ルールに落とし込むことです。属人化を外すほど、内窓の短工期・高回転が利益に変わります。
「説明テンプレ」「3枚シミュレーション」「4役分担+期限」を揃えると、補助金案件は現場を疲弊させずに受注を増やせます。









