どんぶり勘定を卒業する!工務店経営者が毎月チェックすべき「試算表」の読み方と3つの経営指標

工務店経営は、現場が回っているときほど「数字の確認」が後回しになります。月末の入出金、外注費の精算、材料の立替、職人手配の調整が重なると、会計は「税理士に渡して終わり」になりがちです。

その結果、粗利の感覚が現場ごとにズレたり、経費の増減理由が説明できなかったり、資金繰りの不安が突然出たりします。現場が躓くポイントは「売上があるのにお金が残らない理由」を試算表で説明できないことです。

試算表(しさんひょう)は「今月の儲けと費用、資産と負債の途中成績表」を1枚で確認できる資料です。ここを毎月読む習慣を作ると、社内の判断が早くなり、資金繰りの手当ても前倒しできます。

試算表を見ても、どこを見ればいいか分からず、結局「売上が増えたか」だけを確認して終わっています。

試算表は税理士さんのための資料ですよね。うちは職人仕事だから、細かい数字はそこまで要らないと思っていました。

目次

工務店に試算表が必要な理由を「現場の判断」に落とし込む

試算表は「税金のため」ではなく「赤字と資金ショートの予防」のために使います

試算表は税務申告の材料にもなりますが、経営側が見る価値は「今の状態を早めに修正できる」点です。工務店は案件ごとに入金タイミングがズレやすく、外注費や材料費が先行しやすい業態です。売上が立っているのに口座残高が増えない場面は、珍しくありません。

ここで必要なのは感覚ではなく、毎月同じルールで確認することです。試算表を読めると「どの案件で粗利が落ちたか」「固定費がどれだけ重くなったか」「資金の余力がどれだけあるか」を、社内で説明できます。説明できると、価格交渉、仕入れ条件の見直し、採用や広告の判断が早くなります。

工務店の実務シーンで起きやすい「見えない赤字」の正体

見えない赤字は、たとえば次のように発生します。現場監督が応援手配で外注を増やした、材料の値上げを見積に反映できていなかった、追加工事の請求が遅れて入金が翌月にずれた、などです。現場としては必要な判断でも、月次の数字に置き換えると「粗利の低下」「販管費の増加」「資金繰りの悪化」として表れます。

失敗しやすいポイントは、数字の確認が「決算前」になってしまうことです。決算前では手遅れの調整も多く、現場の頑張りが改善につながりません。改善のコツは「毎月の同じ日」に「同じ3つの視点」で見ることです。運用イメージとしては、月初に前月の試算表を受け取り、10分でチェックし、15分で社内共有する流れにしましょう。

【月次チェック会の運用テンプレ(コピペ用)】
実施日:毎月◯日(前月締め後、税理士から試算表が届いた当日)
参加者:代表/経理(または事務)/現場責任者(任意)
議題:①粗利率の前年差(案件別の要因確認)②固定費の前年差(増加理由)③資金余力(現預金と支払予定)
決めること:今月の対策を1つだけ決めて担当と期限を置く(例:見積単価の見直し、外注条件の再交渉、請求の締めルール徹底)

試算表は「毎月の現場判断を数字で説明する道具」です。見る日と見る観点を固定して、手遅れになる前に対策を打ちましょう。

試算表の基本構造を押さえる:まずはこの3ブロックだけ見ましょう

損益計算書ブロック:粗利と固定費の関係を読みます

試算表には、損益計算書(そんえきけいさんしょ)ブロックと貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)ブロックが混ざって載ることがありますが、ここでは「儲け」と「安全性」に分けて見ます。損益側は、売上、売上原価、粗利、販管費、営業利益の並びが基本です。粗利(あらり)は「売上から材料費や外注費など工事に直接かかった原価を引いた残り」です。

工務店の実務シーンでは、案件が増えた月ほど外注費や材料費の動きが大きくなります。失敗しやすいポイントは「売上だけ増えて喜ぶ」ことです。粗利が落ちていれば、忙しいのに儲からない状態です。改善のコツは、粗利が落ちた月に「値上げ未反映」「追加工事の未請求」「外注比率の増加」のどれかを必ず言語化することです。運用イメージは、試算表と合わせて案件別粗利の一覧を税理士または社内で用意し、原因を1つに絞って対策します。

貸借対照表ブロック:資金の余力と「支払いの山」を読みます

貸借対照表は「今ある資産と、支払う義務(負債)と、会社の体力(純資産)」を並べた表です。現預金、売掛金、買掛金、借入金あたりだけでも、毎月見ると資金の詰まりが早めに見つかります。キャッシュフロー(資金繰り)は「お金の増減の流れ」を指し、黒字でも入金が遅いと資金が足りなくなります。

工務店の失敗例として多いのは、売掛金が増えているのに回収予定が曖昧なまま、支払いだけが先に来る状態です。改善のコツは、売掛金の内訳を「請求済み」「未請求」「入金予定日あり」に分け、支払予定とセットで見ることです。運用イメージとして、月次の試算表確認と同じ日に「入金予定表(今月と翌月)」を1枚だけ作り、支払いの山を見える化しましょう。

項目試算表で分かること分からないこと(別資料が必要)工務店での実務チェック
売上今月の計上売上入金のタイミング入金予定表と突合し、未入金案件を洗い出す
粗利儲けの原資案件別の原因案件別粗利一覧で、外注比率・追加工事・値上げ反映を確認
販管費固定費の増減費用の妥当性の判断材料「今月だけ増えた理由」を一言で説明できる状態にする
現預金今の残高の体感来月の支払い山買掛金・借入返済・外注支払の予定を別紙で確認
売掛金回収前の売上請求漏れの有無未請求が混ざっていないか、請求締めルールで管理

試算表は「損益=儲けの構造」と「貸借=資金の余力」を分けて読みます。まずは粗利・販管費・現預金・売掛金だけを毎月固定で見ましょう。

工務店が毎月チェックすべき3つの経営指標:安全性と収益性を一発で掴む

Two businessmen are meeting together, they point to financial documents to discuss plans and solutions, chart graphics showing financial status and performance. Business administration concept.

指標1:粗利率(忙しいのに儲からない状態を止めます)

粗利率(あらりりつ)は「粗利 ÷ 売上」で、売上に対して儲けの原資がどれだけ残っているかを示します。現場の段取りが良くても、材料費高騰や外注比率の増加が続くと粗利率は下がります。工務店の実務では「値上げの反映漏れ」「追加工事の請求遅れ」「外注の単価改定」が主因になりやすいです。

失敗しやすいポイントは、粗利率が下がった理由を「忙しかった」で終わらせることです。改善のコツは、粗利率が下がった月に、案件を3つだけ抽出して原因を分類することです。運用イメージとして、月次会議で「原因はA(材料)/B(外注)/C(未請求)」のどれかにラベルを付け、翌月の手当て(見積単価、仕入れ条件、請求締め)を1つだけ決めましょう。

指標2:固定費カバー率(固定費を粗利で賄えるかを確認します)

固定費(こていひ)は「売上の増減にかかわらず毎月発生しやすい費用」で、家賃、人件費、車両費、通信費、広告費などが該当しやすいです。固定費カバー率は「粗利 ÷ 販管費」で、粗利で固定費をどれだけ賄えているかを見ます。販管費(はんかんひ)は「販売費及び一般管理費」の略で、現場原価以外の会社運営コストです。

ここではハイブリッドで整理します。

  • 固定費カバー率が1.0未満:粗利で固定費を賄いきれていない状態です
  • 固定費カバー率が1.0前後:横ばいで、追加の投資判断は慎重にします
  • 固定費カバー率が1.2以上:固定費を賄ったうえで余力が出やすい状態です

補足解説です。失敗しやすいポイントは、広告や採用、車両の増車など「固定費化する支出」を勢いで決めてしまうことです。改善のコツは、固定費が増えた月に「増えた固定費はいつまで続くか」「粗利の増加で回収できるか」をセットで確認することです。運用イメージとして、固定費が増える稟議は、必ず試算表の数値(粗利と販管費)を添えて判断しましょう。

【固定費化する支出の稟議テンプレ(コピペ用)】
支出内容:◯◯(例:求人広告/車両リース/事務所増床)
月額(または年額):◯◯円 継続期間:◯ヶ月(いつ止められるか)
狙い:売上増/粗利率改善/採用/業務効率化 のどれか1つに固定
試算表の根拠:前月の粗利◯◯円、販管費◯◯円、固定費カバー率◯◯
回収条件:粗利が月◯◯円以上増える見込み(案件数/単価/粗利率の前提を明記)

指標3:資金余力(月末残高ではなく「次の支払いまでの安全性」を見ます)

資金余力は、厳密な指標名にこだわらず「現預金-(直近の支払予定)」で確認しましょう。現預金は試算表に出ますが、支払予定は買掛金、外注支払、借入返済、社会保険料などが絡むため、別紙の予定表が必要です。ここで大事なのは、月末残高の大小ではなく「支払いの山を越えられるか」です。

工務店の実務シーンでは、外注支払日と材料支払日が重なったときに資金が急減します。失敗しやすいポイントは、請求締めが遅れ、回収が翌月にずれているのに、支払い条件だけが先に来ることです。改善のコツは、資金余力が薄い月は「請求の前倒し」「入金条件の調整」「支払い条件の交渉」を同時に検討することです。運用イメージとして、月次会議で資金余力が基準未満なら、今月の優先行動を1つに絞って実行します。

毎月の指標は「粗利率」「固定費カバー率」「資金余力」の3つに固定します。指標が下がったら、原因を1つに絞って翌月の行動に落としましょう。

月次で試算表を“使える状態”にする:数字が揃わない原因と整え方

締めを早くするより「揃えるルール」を先に決めます

月次の試算表が使えない原因は、締め日が遅いことよりも「計上ルールが月ごとにブレる」ことが多いです。たとえば材料費の計上が請求書ベースだったり現金ベースだったりすると、粗利が月ごとに歪みます。発生主義(はっせいしゅぎ)は「支払った日ではなく、費用や売上が発生した月に計上する考え方」です。

失敗しやすいポイントは、現場の立替やカード払い、仮払精算が月をまたいで放置されることです。改善のコツは「仮払は翌月◯日までに精算」「領収書は写真提出で一次締め」など、現場が守れるルールにすることです。運用イメージとして、経理担当が全部追いかけるのではなく、現場責任者が週1で仮払一覧を確認する役割にしましょう。

【月次を揃える運用ルール(コピペ用)】
1)仮払・立替:発生から◯日以内に精算(遅れる場合は理由と予定日を記録)
2)領収書:当日中に写真提出(紙は月末にまとめて提出でも可)
3)請求書の締め:毎月◯日締め、未着は「未払計上」対象として一覧化
4)追加工事:発生当日に「追加工事メモ」を起票し、請求漏れを防止
5)案件別原価:材料/外注/その他を最低限の3区分で毎月揃える

案件別粗利の精度を上げるには「現場ヒアリングの型」が必要です

試算表は会社全体の数字ですが、粗利率が動いた原因は現場にあります。ここで必要なのは、現場に「数字の責任」を押し付けることではなく、原因を取りに行く質問の型です。原価管理(げんかかんり)は「材料費や外注費など工事原価を案件ごとに集計し、粗利を保つ仕組み」です。

失敗しやすいポイントは、原因確認が感想戦になり「次の手」が決まらないことです。改善のコツは、粗利が落ちた案件だけを対象に、質問を固定することです。運用イメージとして、月次会議の前に現場責任者が3案件だけヒアリングし、会議では事実と対策だけを共有します。

【現場ヒアリング項目テンプレ(粗利が落ちた案件だけでOK)】
1)見積時の前提:材料単価・外注単価・工期の想定は妥当でしたか
2)追加工事:発生件数と請求状況(未請求の有無)
3)手戻り:やり直し・待ち時間が発生した理由(段取り/仕様変更/天候)
4)外注比率:応援手配の増減と単価改定の有無
5)次回の改善:見積反映・工程見直し・発注条件のどれを変えますか(1つに絞る)

月次の精度は「早さ」より「揃え方」です。仮払・請求・追加工事の型を決めて、粗利が動いた理由を毎月説明できる状態にしましょう。

よくある失敗と立て直し:試算表が読めない会社に共通する3つの詰まり

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詰まり1:勘定科目がバラバラで、比較できません

勘定科目(かんじょうかもく)は「お金の出入りを分類する箱」です。ここがバラバラだと、前年差が意味を持ちません。たとえば同じ広告費が、月によって「販売促進費」「支払手数料」「雑費」に入ると、増減理由が追えなくなります。

失敗しやすいポイントは、担当者ごとに判断が違い、処理が属人化することです。改善のコツは「迷ったらこの箱」のルールを10個だけ作り、例外は一覧にして税理士と合意することです。運用イメージとして、経理担当が毎月の仕訳で迷ったものをメモし、月次会議の後にルールを更新します。

【勘定科目の迷いを減らすルールテンプレ(抜粋例)】
・求人サイト:広告宣伝費に統一(採用目的でも分類は固定)
・振込手数料:支払手数料に統一(現場立替でも同じ)
・工具の小物:消耗品費に統一(◯円以上は固定資産の判断)
・現場の飲料:福利厚生費に統一(来客用は会議費)
・外注の応援:外注費に統一(材料込みは契約書の内訳に従う)

詰まり2:試算表を見ても「次の一手」に変換できません

数字が読めないのではなく、数字から行動に落とす工程がないケースが多いです。たとえば粗利率が下がったとき、原因が案件なのか仕入れ条件なのか請求漏れなのかを分解せず「頑張る」で終わると、翌月も同じことが起きます。

失敗しやすいポイントは、会議で話したのに担当と期限が決まらないことです。改善のコツは、対策を「今月やること」に1つだけ絞ることです。運用イメージとして、月次会議の最後に「今月の打ち手」を1つ決め、担当者と期限を置き、翌月に効果を確認します。

【月次報告(社内共有)テンプレ:代表→社内(コピペ用)】
今月の試算表まとめ:
・粗利率:◯◯%(前年差:◯◯)原因:A/B/Cのうち「◯◯」
・固定費カバー率:◯◯(前年差:◯◯)増減理由:◯◯
・資金余力:◯◯円(支払い山:◯日)対応:◯◯
今月の打ち手(1つだけ):◯◯(担当:◯◯/期限:◯日)

詰まり3:現場と事務が分断し、請求・追加工事が漏れます

請求漏れや追加工事の未請求は、粗利率と資金余力の両方を悪化させます。追加工事(ついかこうじ)は「当初契約に含まれない追加作業」で、発生した時点で記録しないと、月末には忘れます。現場は忙しく、事務は状況が見えないため、分断が起きやすいです。

失敗しやすいポイントは、口頭連絡だけで追加工事が流れ、請求の締めで漏れることです。改善のコツは、追加工事は「1分で書けるメモ」で起票し、毎週まとめて請求側に渡すことです。運用イメージとして、現場はメモ起票、事務は一覧化、代表は月次会議で未請求ゼロを確認します。

試算表が読めない原因は「分類が揃わない」「行動に変換しない」「請求が漏れる」の3つです。仕組みの詰まりを先に外してから、指標を回しましょう。

まとめ:試算表は「毎月の判断軸」を固定すると武器になります

判断軸の再確認:3指標で安全性と収益性を同時に見ます

試算表は、全部を理解しなくても使えます。毎月の判断軸を「粗利率」「固定費カバー率」「資金余力」の3つに固定し、数字が動いた理由を一言で説明できる状態にしましょう。これだけで、値付け、外注、採用、広告、設備投資の判断が速くなります。

明日からの一歩:月次10分チェックを仕組みにします

明日から試せる一歩は、次のどれか1つで十分です。

  • 月次チェック会の開催日を固定する
  • 仮払と領収書のルールを1枚にする
  • 追加工事メモの起票を始める

小さく始めて、毎月回して定着させましょう。社内共有はテンプレで十分です。数字が揃い、共有が回ると、現場と事務の会話が噛み合い、判断がブレません。

試算表は「見る場所」を固定すると、専門知識がなくても経営判断に使えます。月次の型を作り、社内で同じ言葉と同じ指標で回しましょう。

この記事を書いた人

くらし建築百科 編集部は、工務店・リフォーム会社・建築会社の「現場」と「経営」の両方に寄り添う情報発信チームです。住宅業界のマーケティング支援やDX導入支援に携わってきたメンバーが、集客・採用・補助金・業務効率化など、明日から使える実務ノウハウを分かりやすくお届けします。

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