リフォームを検討していると、ホームページやチラシで「自社施工なので安心です」といった言葉をよく見かけます。自社施工と聞くと、なんとなく安心感がありますが、実際には協力会社にほとんど丸投げしているケースもあります。こうした“なんちゃって自社施工”の業者を見抜けないと、工事中のトラブルや施工不良、追加費用などのリスクが高くなります。
「自社施工って書いてある会社から見積もりを取ったけれど、本当に自社でやってくれるのかどうか、どこを見れば良いのか分からないです…。」
「前にお願いした会社は“自社施工です”と言いながら、現場には毎回違う下請けさんが来て説明も不十分でした。最初にもっと確認しておけばよかったと感じています。」
リフォームで後悔しないためには、「どの会社と契約するか」だけでなく「誰が実際に施工するのか」「どのような体制で工事が進むのか」を具体的に確認することが非常に大切です。
この記事では、「自社施工」と名乗る業者の本当の意味と、下請け丸投げで起こりやすいトラブル、危ない業者のサイン、実際の見極め方のチェックポイントを詳しく解説します。しつこい営業だけで判断するのではなく、施工体制という視点から、安心できる地域密着工務店を見つけるための参考にしてください。
“自社施工”とは本来どういう意味?よくある誤解を整理
まずは、「自社施工」という言葉の本来の意味から整理します。一般的に、自社施工とは「契約した会社が、自社の社員や常勤の職人を中心に工事を行う」体制を指します。ただし、実際の現場では、どの会社も一部の工種を協力会社(下請け)に依頼することがあります。
問題になるのは、協力会社の活用そのものではなく、工事の管理や品質の責任を十分に果たさないまま、実質的に下請けに丸投げしているケースです。この場合、施主と契約した会社と、現場で作業する職人との間に大きな情報のズレが生じやすくなります。
本当に自社施工に近い体制かどうかをイメージしやすくするために、よくあるパターンを比較してみましょう。
| 項目 | 本来の「自社施工」に近いケース | 実態は「下請け丸投げ」に近いケース |
| 現場管理 | 契約した会社の社員(現場監督)が一貫して管理 | 下請けのリーダー任せで、元請け担当者はほとんど現場に来ない |
| 職人 | 自社の職人+長年付き合いのある協力会社が中心 | 都度、単発で依頼した職人が多く、担当がコロコロ変わる |
| 打ち合わせとの整合性 | 打ち合わせ担当と現場担当が密に連携し、仕様が共有されている | 図面や要望が職人に十分伝わっておらず、「そんな話は聞いていない」と言われる |
| トラブル時の対応 | 元請けが前面に立って原因調査と補修を行う | 「下請けのミスなのでそちらと話してください」と責任を押し付ける |
このように、「自社施工」と書かれていても、中身は会社によって大きく違います。「自社施工と書いてあれば安心」と決めつけず、具体的な体制を確認することが大切です。
本当に信頼できる地域密着工務店は、協力会社を活用していても、その関係性や現場管理の方法についてきちんと説明してくれることが多いです。
下請け丸投げで起きやすいトラブルと、その背景


施工体制の確認を怠ると、契約後に「こんなはずではなかった」というトラブルにつながります。ここでは、下請け丸投げで起きやすい代表的なトラブルを紹介します。
代表的なトラブルとして、次のようなものがあります。
- 打ち合わせ内容が現場の職人に十分伝わっておらず、仕上がりがイメージと違う
- 工期が遅れているのに、元請けからきちんとした説明がない
- 細かな部分の仕上がりが雑で、すぐに建具の不具合や床の浮きが出てしまう
- 工事中に追加工事の話が次々出てきて、当初の見積もりより大きく増額する
こうしたトラブルが起きる背景には、「価格優先でとにかく安く受注し、そのしわ寄せを下請けに押し付ける体制」があることが多いです。元請けが十分な利益を確保できていないと、下請けの手間賃を削ることになり、結果として工期短縮や人員不足による施工品質の低下につながります。
見積もりや契約段階で不安を感じるポイントがあれば、同じカテゴリの他記事も参考になります。
関連記事:「相場より安すぎる見積もり」に要注意!悪徳リフォーム業者の特徴5選【事例付き解説】
“自社施工”を名乗る業者の見極め方|5つのチェックポイント
ここからは、実際に「自社施工です」と言う業者に出会ったとき、どのような質問や確認をすれば良いのかを具体的に紹介します。営業担当者の印象だけで判断せず、施工体制を一つひとつ確認していくことが大切です。
チェック1:施工体制や協力会社について具体的に説明してくれるか
まず確認したいのは、「どのような体制で工事を行うのか」です。次のような点を質問してみると、実態が見えやすくなります。
- 自社の職人は何名くらいいるのか、どの部分を担当するのか
- 協力会社を使う場合、その会社とはどれくらいの付き合いがあるのか
- 現場全体の指揮・管理は誰が行うのか
信頼できる会社は、「大工工事は自社の職人が担当し、電気・設備は長年一緒にやっている協力会社です」といったように、具体的な説明をしてくれます。逆に、「全部うちでやっているので安心です」といった抽象的な説明しかない場合は、実際の体制が見えにくく、注意が必要です。
チェック2:現場監督や責任者と事前に顔合わせできるか
営業担当者の印象が良くても、実際に現場を取り仕切るのは別の担当者というケースが多いです。そこで、「工事前に現場監督や責任者の方とも一度お話しできますか」と確認してみることをおすすめします。
工事前の段階で現場監督が同席し、採寸や仕様の確認をしてくれる会社は、情報共有がスムーズな傾向があります。反対に、「現場のことは職人に任せているので」と言って最後まで担当者を紹介してくれない会社は、責任の所在があいまいになりやすいです。
チェック3:見積書の内訳に「誰がどの工事をするか」が見えるか
見積書の内訳を見ると、どの程度管理が行き届いている会社かがある程度分かります。特に見ておきたいポイントは次の通りです。
- 「一式」ばかりの記載ではなく、工種ごとの金額がある程度分かれているか
- 諸経費や管理費が適切な水準で計上されているか
- 施工範囲と数量が図面や打ち合わせ内容と一致しているか
極端に安い「自社施工お任せパック」のような記載で、内訳がほとんど分からない見積もりには注意が必要です。あとから「それは見積もりに入っていないので追加です」と言われるきっかけになりやすいです。
チェック4:建設業許可・保険などの「万が一への備え」があるか
施工体制と合わせて確認したいのが、建設業許可や各種保険の加入状況です。これらは、万が一トラブルが起きたときに、施主を守るための大切な仕組みです。
- 建設業許可の有無と、許可番号・許可業種
- リフォーム瑕疵保険などの加入状況
- 工事中の事故に備えた賠償責任保険の加入
建設業許可が必須でない規模の工事もありますが、許可や保険に関する説明があいまいな会社は注意が必要です。きちんとした会社であれば、許可番号や加入保険について資料を見せながら説明してくれることが多いです。
関連記事:建設業許可・登録番号の調べ方|信頼できるリフォーム業者を見極める基礎知識
見積もりや契約の場面では、「価格が安いかどうか」だけに目が行きやすいですが、誰がどのような体制で工事を行うのか、万が一のときにどう対応してくれるのかも同じくらい重要です。気になる点は遠慮なく質問しましょう。
危ない“なんちゃって自社施工業者”のサイン


ここでは、特に注意したい「なんちゃって自社施工業者」のサインを紹介します。全てに当てはまるから必ず悪徳業者というわけではありませんが、複数当てはまる場合は慎重に検討した方が安心です。
チェックしやすいポイントとして、次のようなサインがあります。
- 「自社施工だから安いです」と繰り返すが、内訳の説明がほとんどない
- 打ち合わせの担当者と、見積書の差出人、契約書面の会社名がバラバラ
- 質問しても「そこはうちの職人がしっかりやりますので大丈夫です」としか答えない
- 相場より極端に安い見積もりを提示し、すぐに契約を迫ってくる
- 口コミや評判を聞いても、具体的な施工事例やお客様の声をあまり紹介してくれない
特に、「今だけの大幅値引き」「今日決めてもらえればこの価格です」といった強い値引きアピールと、「自社施工だからできます」という説明がセットになっている場合は注意が必要です。費用面だけを強調し、施工体制やアフターサービスの話は曖昧なままになっているケースが多いです。
関連記事:“値引きします”に隠れた罠|悪質リフォーム営業が使う4つの心理テクニック
また、営業の場面だけでなく、説明の透明性も重要です。工事内容の説明があいまいで、「とりあえず全部きれいになります」「細かいところはお任せください」といった言葉が多い会社は、後から認識のズレが起きる可能性が高くなります。
“しつこい営業”だけで判断しない|施工体制という新しいものさし
悪質なリフォーム会社というと、「しつこく電話をかけてくる」「訪問販売で強引な営業をする」といったイメージが強いかもしれません。しかし、近年はインターネット広告やチラシ経由で問い合わせを集め、表向きは丁寧な対応をしながら、実態は下請け丸投げというケースも増えています。
営業のしつこさだけで業者を判断せず、「施工体制が分かりやすく説明されているか」「現場の責任者がはっきりしているか」という視点を持つことが、トラブルを防ぐ近道です。
しつこい営業や不透明な説明について、さらに詳しく知りたい場合は、下記の記事も参考になります。
関連記事:しつこい営業・説明が不透明…こんな工務店は危ない?信頼できる会社との違い
見積もり・相談のときに聞いておきたい質問リスト
ここまでの内容を踏まえて、実際に見積もりや相談の場面で使える質問例をまとめます。紙に印刷したり、メモに控えたりして、打ち合わせの際に活用してください。
まずは、次のような流れで質問していくと、施工体制が見えやすくなります。
- 今回の工事は、御社の自社職人と協力会社、どのような分担で進む予定ですか。
- 現場全体の管理・チェックをするのは、どなたになりますか。
- 工事中に仕様変更や追加工事が必要になった場合、どのような手順で相談・見積もりが行われますか。
- 建設業許可や加入保険について、資料を見ながら教えてもらえますか。
- これまでに似た内容の工事をした事例や、お客様の声があれば教えてください。
これらの質問に対して、丁寧に答えてくれるかどうかも大切な判断材料になります。「そんなに心配しなくても大丈夫です」といった言葉で済ませず、一つひとつ具体的に説明してくれる会社は、施工体制に自信を持っていることが多いです。
地域密着工務店と上手に付き合うためのポイント


地域密着の工務店は、大手に比べて営業エリアが狭い分、評判や口コミを大切にしている会社が多いです。だからこそ、施主側がきちんと質問をし、お互いに納得しながら進めることで、より良い関係を築きやすくなります。
地域密着工務店と上手に付き合うためには、次のようなポイントも意識してみてください。
- 気になる点や不安な点は、遠慮せず早めに相談する
- 良かった点・気になった点を工事後にきちんと伝える
- 今後のメンテナンスや別の工事の予定も軽く共有しておく
こうしたやり取りを重ねることで、工務店側も「長く付き合っていきたいお客様」として、より丁寧な提案やサポートをしてくれることが多くなります。
業者選びの考え方をより広い視点で知りたい場合は、次の記事も参考になります。
関連記事:信頼できる工務店の見分け方|契約前に確認すべき5つのポイント【2025年版】
まとめ|“誰が施工するのか”を確認して下請け丸投げトラブルを防ぐ
「自社施工です」という言葉だけでは、安心かどうかを判断しきれません。大切なのは、
- 自社職人と協力会社の役割分担が明確か
- 現場監督や責任者がはっきりしているか
- 見積書の内訳や施工範囲が分かりやすく説明されているか
- 建設業許可や保険など、万が一への備えが整っているか
といった点を、一つひとつ確認することです。これらをきちんと説明してくれる会社は、たとえ協力会社を使っていても、施工体制が整っている可能性が高いです。
リフォームで後悔しないためには、「価格」だけで決めず、「施工体制」と「説明の丁寧さ」に注目して業者を選ぶことが重要です。疑問点はその場で解消し、納得してから契約を進めましょう。









