「上の階の足音がうるさい」「道路の車の音で夜眠れない」「子どもの足音や生活音が下の階に響いていないか不安」など、音に関する悩みは多くのご家庭で共通のテーマです。防音リフォームは、こうした悩みを軽減し、今の住まいをもっと快適にするための方法です。ただし、窓・壁・床など、どこにどのような対策をするかによって、かかる費用や効果が大きく変わります。本記事では、防音リフォームの基本から部位別の対策、費用相場、工務店への相談ポイントまでをまとめて解説します。
上の階の足音や外の車の音が気になって、ゆっくり休めない日が続いています…。防音リフォームで本当に改善できるのか知りたいです。
子どもが走り回る音や楽器の音で、いつか近隣からクレームが来ないか心配です。防音対策の考え方や費用感をしっかり理解しておきたいです。
音の悩みは「我慢するしかない」と考えてしまいがちですが、音の種類や発生源に合わせて対策を選べば、今の住まいでも静かさを大きく改善できる可能性があります。そのためには、防音の仕組みや部位ごとの特徴を押さえたうえで、無理のない範囲で対策することが大切です。
防音リフォームが必要になる主なケース


まずは、どのようなケースで防音リフォームの相談が多いのかを整理してみましょう。ご自身の状況に近いパターンがあれば、対策を検討するきっかけになります。
外からの騒音が気になる場合
次のような外部騒音でお悩みの方は、窓や外壁周りの対策が候補になります。
- 幹線道路や踏切が近く、車・バイク・電車の音が気になる
- 近隣の店舗・工場・学校などからの騒音が届く
- 深夜や早朝に特定の音(トラックの積み下ろし、ゴミ収集など)が気になる
外からの音は、多くの場合「窓」から入り込んでいます。窓ガラスやサッシの性能を高めることで、室内に入ってくる騒音を抑えられる可能性があります。
家の中の音を外や下の階に漏らしたくない場合
一方で、次のように自宅から出ていく音が気になるケースもあります。
- 子どもが走り回る足音や飛び跳ねる音
- ピアノやギターなどの楽器の音
- ホームシアターやゲームの重低音
- 深夜の洗濯機や掃除機などの生活音
この場合は、床・壁・天井の構造や仕上げ材を工夫する「室内側の防音リフォーム」がポイントになります。特に集合住宅では、音の問題が近隣トラブルに発展しやすいため、早めの対策が安心につながります。
関連記事:近隣トラブルに発展しないために…工事前にできる3つの配慮
防音・遮音・吸音の違いを理解しておきましょう
防音リフォームを考えるうえで、「防音」「遮音」「吸音」という言葉の違いを知っておくと、工務店との打ち合わせがスムーズになります。
| 用語 | 意味 | 主な対策例 |
|---|---|---|
| 防音 | 総称的な言葉で、音を小さく感じさせるための対策全般を指すことが多いです。 | 窓の二重化、壁の厚みアップ、床の防音フローリングなど |
| 遮音 | 音を遮って通しにくくする対策です。音の通り道を物理的にふさぐイメージです。 | 遮音シート貼り、二重サッシ、防音ドアなど |
| 吸音 | 室内で音が反射して響き過ぎないようにする対策です。音を吸収する素材を使います。 | 吸音パネル、カーペット、カーテン、家具配置の工夫など |
リフォームで行うのは主に「遮音」と「吸音」の組み合わせです。どの音をどの程度小さくしたいのかを工務店に伝えることで、適切な組み合わせを検討しやすくなります。
部位別・防音リフォームの方法と特徴
ここからは、窓・壁・床・天井・ドアといった代表的な部位ごとに、防音リフォームの方法と特徴を見ていきます。
1. 窓の防音対策(外からの騒音対策の基本)
外部騒音の多くは窓から入ってくるため、窓の性能を高めることで大きな改善が期待できます。代表的な方法は次の通りです。
主な対策とポイント:
- 内窓(二重窓)を設置して窓を二重構造にする
- 防音性能の高いガラス(合わせガラス・複層ガラスなど)に交換する
- サッシの気密性を高め、すき間風を減らす
2. 壁の防音対策(隣室・隣家への音漏れ対策)
隣の部屋や隣家との共有壁から音が伝わる場合は、壁の内部構造を工夫する「遮音+吸音」がポイントです。
- 既存壁の上から石膏ボードを重ね張りして厚みを増やす
- 壁の中にグラスウールなどの断熱材・吸音材を充填する
- 遮音シートを張り込み、音の振動を抑える
ただし、壁を厚くすることで室内が少し狭くなるため、どの面にどの程度施工するかを工務店と相談しながら決めることが大切です。
3. 床の防音対策(足音・衝撃音の軽減)
子どもの足音やイスを引く音など、衝撃音が気になる場合は床の構造を見直します。防音性能を持ったフローリング材や下地材を組み合わせる方法が一般的です。
代表的な対策:
- 防音フローリング(LL45などの性能表示)の採用
- 床下に防振マットや遮音マットを敷き込む
- カーペットやラグを併用して吸音効果を補う
床材の種類ごとの特徴は、次の記事もあわせて参考になります。
関連記事:フローリングとクッションフロア、どっちがおすすめ?性能・価格・施工比較まとめ
4. 天井の防音対策(上階からの音・楽器の音対策)
上の階から伝わる音や、自室から上方向に抜けていく音が気になる場合は、天井の防音も候補になります。天井裏のスペースを利用して遮音材や吸音材を入れる方法が一般的です。
- 既存天井を一部撤去し、天井裏に断熱材・吸音材を追加する
- 天井を一段下げて二重天井にし、間に吸音層を設ける
5. ドア・建具の防音対策
室内ドアや玄関ドア周りのすき間から音が漏れているケースもあります。この場合は、ドアの隙間をなくし、気密性を高める対策が効果的です。
- 防音ドア・高気密ドアへの交換
- ドア周りの気密パッキンの追加
- 郵便受けや換気口の開口部の見直し
防音リフォームの費用相場の目安


防音リフォームは、部位・面積・グレードによって費用が大きく変わります。ここでは、一般的な戸建て・マンションでよく行われる工事の費用感をざっくり把握するための目安を紹介します。
| 部位・工事内容 | 規模の目安 | 費用相場(目安) |
|---|---|---|
| 窓の内窓(二重窓)設置 | 腰高窓1か所 | 8万〜15万円前後 |
| 防音ガラスへの交換 | 掃き出し窓1か所 | 10万〜20万円前後 |
| 壁の防音リフォーム | 6〜8畳の一面〜二面 | 20万〜50万円前後 |
| 床の防音フローリング張り | 6〜8畳の1室 | 20万〜40万円前後 |
| 天井の防音工事 | 6〜8畳の1室 | 20万〜40万円前後 |
| 防音ドアへの交換 | 室内ドア1か所 | 10万〜30万円前後 |
戸建てとマンションで異なる防音リフォームの考え方
防音リフォームは、戸建てとマンションで考え方が変わります。特にマンションの場合は、構造や管理規約の制限を踏まえた計画が欠かせません。
マンションの防音リフォームでは、「どこまで共用部分か」「床の遮音等級にルールがないか」など、構造とルールの両面からの確認が必要です。計画前に管理組合や管理会社に相談しておきましょう。
戸建ての場合のポイント
戸建てでは、構造や工事範囲の自由度が高いため、窓・外壁・屋根・床・天井といった複数の部位を組み合わせた対策がしやすいです。一方で、外から見た意匠や、将来の間取り変更とのバランスも意識する必要があります。
マンションの場合のポイント
マンションでは、共用部分にあたる外壁や躯体(くたい)部分を勝手にいじることができないため、室内側の仕上げ材や下地を工夫する形が中心になります。また、床の「遮音等級(LL◯◯など)」が管理規約で指定されていることも多く、これを満たすフローリング材を選ぶ必要があります。
関連記事:外構・水回り・内装…工事ジャンル別の進め方の違いとは?
防音リフォームで近隣トラブルを減らすという考え方


防音リフォームは、ご自身の快適さを高めるだけでなく、「近隣トラブルを未然に防ぐ」という意味でも役立ちます。特に集合住宅では、音の感じ方に個人差があり、ある日突然クレームを受けるケースもあります。
特に次のような場合、防音リフォームは「自分たちの安心」のためだけでなく、「周りの人との関係を守るための投資」としても意味があります。
- 子どもが成長して活動量が増えてきた
- 楽器やホームシアターなど、音の出る趣味を続けたい
- 在宅ワークでオンライン会議が増え、会話の音が気になる
防音リフォームを検討するときの進め方


最後に、防音リフォームを検討するときの基本的なステップを整理します。いきなり「全部を防音仕様にする」必要はなく、気になる場所から優先順位をつけて進めることが現実的です。
1. 気になる音の種類と時間帯をメモしておく
まずは、どんな音が、いつ、どの方向から聞こえるのかを数日〜数週間記録しておきます。
- 外からの車・バイク・電車の音なのか
- 上階・下階・隣室など、どの方向からの音なのか
- 朝・昼・夜・深夜など、どの時間帯に気になるのか
このメモがあると、工務店に相談する際に状況を具体的に伝えやすくなり、提案内容の精度も上がります。
2. 防音性能だけでなく「暮らし全体」で優先順位をつける
防音リフォームは、どうしても一定の費用がかかります。そのため、防音だけに偏りすぎず、「将来の間取り」「収納計画」「内装デザイン」などとあわせて考えると、満足度の高いリフォーム計画になります。
3. 防音リフォームの実績がある工務店に相談する
防音リフォームは、単に材料を変えれば良いわけではなく、「音の伝わり方」を理解したうえで構造や納まりを考える必要があります。そのため、過去に防音や静音対策の実績がある工務店・リフォーム会社に相談するのがおすすめです。
「どんな音の悩みを、どの部位の工事で、どの程度改善できたか」という事例を見せてもらうと、イメージしやすくなります。
4. 見積もりでは「どの部位にいくらかかるか」を確認する
防音リフォームの見積もりでは、窓・壁・床・天井など、部位ごとの費用内訳を確認しましょう。「この部屋の窓だけ先に行う」「床は次のタイミングに回す」など、段階的な工事計画も立てやすくなります。
見積書の内容がわかりにくい場合は、そのままにせず、項目ごとに説明を受けることが大切です。
まとめ:防音リフォームは「音の整理」から始めましょう


防音リフォームは、窓・壁・床・天井・ドアなど、どこにどのような対策を行うかで費用も効果も大きく変わります。まずは、どんな音がどこから気になるのかを整理し、目的に合った対策を選ぶことが大切です。近隣トラブルの予防や、家族みんなが気兼ねなく暮らせる環境づくりのためにも、早めの情報収集と工務店への相談を進めていきましょう。










