介護が始まると、住まいの不便さは一気に「危険」へ変わります。段差でつまずく、トイレまで間に合わない、浴室が滑る、玄関で転倒する。こうした困りごとは、部分的な対処を積み重ねるほど、かえって費用と手間が増えやすいのが介護リフォームの難しいところです。
母が退院することになって、急いで手すりを付けたいです。とりあえずそれだけで大丈夫でしょうか?
デイサービスの送迎も使う予定です。車椅子になる可能性もあるので、最初に何から考えればいいか知りたいです。
結論から言うと、介護リフォームは「今の困りごと」だけでなく、デイサービス併用・車椅子生活・介助のしやすさまで含めた全体計画が重要です。この記事では、改修ポイントを部位別に整理しながら、よくある失敗(順番・補助金・見積もりの落とし穴)を避ける進め方を解説します。
この記事でわかること
・介護リフォームの全体計画の立て方(優先順位と順番)
・デイサービス送迎と車椅子を想定した改修ポイント
・費用の目安と補助金(自治体・介護保険)の使い分け
・業者選びで確認すべきポイント
介護リフォームは「部分対応」より全体計画が必要な理由


介護リフォームが難航しやすい理由は、暮らしの中で危険が起きる場所が「一か所」ではないからです。例えば手すりを付けても、廊下幅が狭くて車椅子が通れない、トイレの扉が内開きで介助ができない、浴室に段差が残っている、といった具合に別のボトルネックが残ります。
また、デイサービスを併用する場合は「送迎の導線」が重要です。玄関アプローチ、段差、雨の日の滑り、玄関框(かまち)をどうするかで、本人の負担だけでなく、家族・ヘルパー・送迎スタッフの作業負担が大きく変わります。
全体計画で最初に整理する3つの前提
計画の最初に、次の3つを紙に書いて整理しましょう。ここが曖昧だと、業者の提案が比較できず、見積もりもブレます。
- 介護の見立て:今後1〜2年で車椅子の可能性があるか(主治医・ケアマネと共有)
- 介助者の想定:同居家族が介助するのか、訪問介護が中心か
- デイサービスの運用:送迎頻度、送迎車の停車位置、玄関受け渡しの動線
この整理ができると、「どこを広げる」「どこを段差解消」「どこは当面見送る」の判断がしやすくなります。
デイサービス併用を想定した改修ポイント
デイサービスを利用する家庭では、朝夕の出入りが増え、送迎スタッフが玄関先まで入るケースもあります。つまり、玄関まわりは「家の顔」でありながら、介護の現場としても使われます。見た目だけでなく、安全性と作業性を両立させましょう。
玄関・アプローチ:滑り、段差、雨の日の転倒を最優先で潰す
転倒が起きやすいのは、屋内よりも屋外との境目です。玄関ポーチの濡れ、傾斜のきつさ、段差の高さ、手すりの握りやすさが関係します。車椅子を想定する場合は、スロープの勾配と踊り場(切り返し)も重要です。
玄関でよくある見落とし
・ポーチがタイルで雨の日に滑る
・手すりの位置が高すぎて握れない
・ドアクローザーが重く、開閉に介助が必要になる
室内動線:廊下幅・曲がり角・床の滑りをまとめて確認する
車椅子生活を想定するなら、ポイントは「通れるか」ではなく「介助者と一緒に通れるか」です。廊下幅が足りないと、本人は進めても介助者が横に付けず危険です。床材も滑りやすいと転倒リスクが上がります。
ここで、動線確認のやり方を具体化しましょう。
チェックは「p+箇条書き」で進めると抜けが減ります。
- 寝室(拠点)→トイレまでの距離と段差
- 寝室→洗面(手洗い)→リビングの移動
- 廊下の幅、曲がり角の回転スペース
- ドアの開閉方向(内開きは介助時に邪魔になりやすい)
- 床の滑り(ワックス、ツルツルしたフローリング)
車椅子生活を見据えた部位別リフォームの考え方


車椅子生活は、本人の移動だけでなく「介助・見守りのしやすさ」が課題になります。ここでは、改修の優先順位が高い部位を整理します。
トイレ:介助スペースと出入りの形が結果を決める
トイレは介護負担が集中しやすい場所です。手すり追加だけで済ませると、介助者が体を入れられず結局使いにくい、というケースが少なくありません。可能なら「介助動作」を想定して、便器の位置・手すりの種類(L型、可動式)・ドア形式(引き戸)を検討しましょう。
トイレ改修の要点
・引き戸化で介助導線を確保
・可動式手すりで移乗(いじょう)を補助
・夜間の足元照明で転倒を減らす
浴室・洗面:滑りと段差、温度差の3点セットで対策する
浴室は転倒とヒートショックの両方に注意が必要です。床の滑り、浴槽のまたぎ高さ、出入口の段差、脱衣所の寒さ。どれか一つを直しても、別の要因が残ると事故につながります。浴室全体の更新が難しい場合も、床材・手すり・浴槽台・暖房で段階的に改善できます。
| 部位 | 主なリスク | 優先度が高い対策 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 浴室入口 | 段差でつまずく | 段差解消、滑りにくい床 | 車椅子の場合は出入り方式も検討 |
| 浴槽 | またぎ転倒 | 低い浴槽、手すり、浴槽台 | 介助者の立ち位置も確認 |
| 脱衣所 | 温度差・転倒 | 暖房、床材、手すり | 夜間利用が多い家庭は照明も重要 |
寝室:介護の拠点は「生活のしやすさ」で決める
介護が始まると、寝室は「療養の拠点」になります。ベッド周りのスペース、トイレまでの距離、夜間の照明、見守りのしやすさを優先しましょう。和室を寝室化する場合は、段差や布団の上げ下ろしが負担になりやすい点にも注意が必要です。
費用の目安と補助金の考え方
介護リフォームの費用は、手すり設置などの軽微な工事から、引き戸化・段差解消・水回り更新まで幅があります。重要なのは、「何をどこまでやるか」を全体計画で決めたうえで、補助金・介護保険・自己負担の組み合わせを設計することです。
補助金の考え方(生活者向け)
同じ工事でも、自治体制度と介護保険で申請窓口・条件・必要書類が変わる場合があります。先に契約・着工すると対象外になることがあるため、順番を守りましょう。
よくある「補助金」勘違いと、事前に確認すべきこと
検索では「高齢者 手すり 補助金」「バリアフリー」などが多く、制度の存在だけ先に知る方が多いです。一方で、申請のタイミングや、対象工事の範囲を誤ると、せっかくの支援が使えません。
- 申請前に契約・着工すると対象外になる制度がある
- 「手すり」は対象でも「内装のついで工事」は対象外になりやすい
- 写真や見積書の形式が決まっており、不備で差し戻しが起きる
補助金や申請手続きで不安がある方は、まず制度全体の流れを把握するとスムーズです。
関連記事:リフォーム補助金の申請書類まとめ|審査で落ちないための完全チェックリスト
失敗しない進め方|優先順位と工事の順番


介護リフォームは「必要になってから慌てて工事」をすると、選択肢が減り、工事品質や費用で後悔しやすくなります。ポイントは、今すぐ必要な改修と、将来に備える改修を分けて、段階的に整えることです。
優先順位の目安(考え方)
1)転倒リスクが高い場所(玄関・トイレ・浴室)
2)生活動線(寝室↔トイレ、寝室↔リビング)
3)介助しやすさ(扉・スペース・照明)
4)将来の車椅子想定(廊下幅、回転スペース)
見積もり・契約で注意したいポイント
介護リフォームは、住みながら工事になることが多く、追加費用や仕様変更が起きやすい分野です。見積もりでは「一式」表記の多さ、諸経費、追加工事の条件を必ず確認しましょう。
関連記事:見積もりに含まれない「諸経費」とは?知らないと損する費用の内訳を解説
地域密着の工務店に依頼するメリット|介護リフォームは「相談力」で差が出る


介護リフォームは、現場の納まり(段差の処理や手すり下地など)で使い勝手が大きく変わります。カタログの仕様を入れるだけではなく、住まい手の動作に合わせた微調整が必要です。そのため、打ち合わせで生活状況を丁寧に聞き取り、現場で調整できる会社が向いています。
業者に伝えると提案が良くなる情報
・デイサービス送迎の頻度と受け渡し場所
・本人の歩行状態(杖、歩行器、車椅子)
・夜間のトイレ回数、転倒歴の有無
・介助者の体格、介助方法(抱える/支える)
まとめ|介護リフォームは「今」と「将来」を分けて計画しましょう
介護リフォームは、目の前の困りごとを解消しながら、車椅子生活やデイサービス併用まで見据えて全体計画を立てることが重要です。転倒リスクの高い場所から優先順位を付け、補助金は「契約前・着工前」に確認して進めましょう。暮らしの状況を丁寧に聞き取り、現場で調整できる地域密着の工務店に相談すると、使いやすさの差が出やすいです。









